第三百三十一話
「広いね!」
大自然の中の露天風呂。
しかもその大自然が世界樹が生み出したものであると考えると、なかなかないシチュエーションである。
「……」
「あれ、さっきからポチが気絶してるです」
「意外とシャイだもんな」
鼻血を流しながらすっかり昇天してしまったポチ。
彼の気持ちは分からなくもない。
ここは女湯である。
そして全員がバスタオルを巻いただけの格好である。
若干キャラが被っていたりすることもあるが、概ね違うタイプの美少女たちだ。
そんな中で、ポチ本人も、バスタオルしか巻いていない美咲が胸に抱いている。
みんな巨乳ばっかりで肌もきれいで、顔面偏差値も高い。
普段はゴリラ呼ばわりされる来夏だが、実は脱ぐとモデル体型である。意味が分かる者は天才だろう。
体を清めてから露天風呂に浸かる剣の精鋭の女性メンバー。
ポチはプカー……と風呂に浮かんでいるところをみると、確実にもう死んでいるといっても過言ではない。
というか、数分前から彼の意識はすでにないわけだが。
「ふう、いい湯だねぇ」
おもわずほっこりする感じだ。
バスタオルにしても、高級ホテルで使われているような滑らかさであり、湯にもいろいろな成分が入っている。
もちろん、体に害な物は含まれていない。
「ムフフフ……」
全員の視界の端ではめちゃくちゃ雫がうずうずしている。
だが、スキルによって遠距離攻撃が可能であり。最近強化されてブラフだとかいろいろ仕込めるようになって数段強くなったアレシアがいるので、こうして目を潤すことで我慢しているようだ。
……今にも爆発しそうだが。
とはいえ……。
「えへへ、雫さ~ん」
「む……」
美奈と天理。
新しく入って来たこの二人は、そんな雫と絡むのに全く抵抗のない人間であった。
そもそも天理はそう言うことをするときはちょっとハードな女である。
抱きついたり撫でたりといろいろやっている。
「平和だね」
「……まあ、そうだな」
風香と羽計は、自分には来ないことにホッとしながら、上を見上げる。
「世界樹が実らせる果実の中には、自ら光るものもあるんですね」
エイミーがうっとりしている。
その理由は全員が分かる。
とても樹高が高く、さらに幅もある世界樹は、その枝にしたってすごい広さだ。
そして、そんな中で自ら発光する果実。
様々な色で光って、プラネタリウムのようであり、とても幻想的だ。
「星みたいに光って綺麗ね」
「こればかりは、人には作れないからなぁ……」
優奈の呟きに、千春は頷く。
実際、この輝きは、単純に世界樹がベストパフォーマンスな状態を続けているだけと言う話だ。
だがそんな状態であるからこそ、同じものはできないだろう。
同じように見えるものはいくらでもあるだろうが、同じものはない。
「えへへ、雫さん。変なところ触らないでくださいよ~」
「美奈ちゃんもなかなかテクニシャンだね~。あ、天理ちゃん。そこは……」
「フフフ、なるほど、ここがいいんだな」
ちょっとエスカレートしてきた三人。
アレシアは無言で手刀を構えて……。
「むぎゃ!」
「痛い!」
「うぐっ!」
全員の脳天に叩きこまれた。
三人は恐る恐るアレシアを見る。
とてもいい笑顔だ。
「絡むのはいいですが限度と言うものを考えなさい」
「「「イエス。マム」」」
怖いものには従順である。
((一体何やってんだアイツら))
壁一枚隔てたところで男湯に浸かる秀星と基樹は、当然ながらそんなことを考えているのだった。




