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第三百三十話

 さて、白の世界樹のそばでまったりし過ぎたようだ。


「……暗くなってきたな」


 全員が空を見上げると、既に夕方である。

 さて、それはそれでどうするかと言う話である。


「白の世界樹って何か平和だし、ここで泊まって行こうぜ」


 どれほど来夏がノープランなのかが分かる言葉である。

 とはいえ、だからと言って悪いというわけではない。

 ここに泊まるということを聞きつけたキャンピングカーが、色々な装備をガチャガチャととりだしていく。


「何やらいろいろ出しているようだな……」

「キャンピングカーの屋上に露天風呂作ってるみたいだな」


 モニターで確認すると、屋上に露天風呂を展開しているところである。

 近くに脱衣所も作っていて、男湯と女湯に分けられていた。

 当然のことながら男湯はそんなに広くないけど。


「露天風呂まで作れるの!?」

「まあ、それくらいはな」


 というわけで……。


「むさい男は外で食材集めか」

「冷蔵庫の中にいろいろ入ってるはずなんだが、世界樹が実らせたものを食べたいという人が多かったから仕方がない。というか、むさい男って言うけど、言うほど年寄りじゃないぞ。肉体年齢はな」


 あえて『肉体年齢は』と付ける秀星。

 異世界で過ごした五年分をごまかして、実際には二十一歳であることをごまかしている秀星はともかく、元魔王である基樹の存在年数は圧倒的だ。おじいちゃんどころの話では済まないだろう。


「それにしても、本当にいろいろ実ってるんだな」


 野菜や果実だけではなく、生肉や魚がぶら下がっている時もある。

 めちゃくちゃ大きなマグロがぶら下がっている時もあるのでなんだか現実的な雰囲気がすっ飛んでいるが、それを気にしても仕方がないのでスルー。


「食えるなら全部一緒だ」

「基樹。現実逃避したいのは分かったからさっさと持って帰るぞ」


 というわけで、ちゃんと整理して持って帰ると……。

 既に来夏が待ちきれなかったのか、既に冷蔵庫にあったもので焼き肉の真っ最中だった。


((まあ、どうせそんなことだろうと思ってたけどな))


 ちなみに肉を焼いているのは来夏と雫であった。

 頭の悪そうな二人だが、こう言う部分は分かるらしい。


「で、基樹は料理できるのか?」

「できるぞ。美奈ができないからな」

「あー……妹がすまんな」

「もう慣れた」


 というわけで、早速仕込みにとりかかる二人。

 持ってきた肉を切り分ける基樹に、持ってきたマグロを高速でさばいていく秀星。

 どう考えても難易度高いことをやっているのは秀星だが、そもそもアルテマセンスがあるので、始めてやることだろうとなんだろうとプロ級である。


「なんかすげえな」


 そんな二人を見て驚く来夏。

 とはいえ……バールで空間跳躍するゴリラに言われたくはない。


「空気がおいしいから食べ物もおいしいです」

「ふにゃぁ」

「そうね。良い感じの何かが世界樹から出てるからなのかな」


 笑顔で食べている美咲と、視線を世界樹に向ける優奈。

 もちろん、そう言ったものが出てきているからこそ世界樹のそばと言うものはすごいのだ。


「すげえよなぁ。まっ、そんなことはいいや。じゃんじゃん食おうぜ!」

「おー!」


 来夏が元気に言って、それに雫が乗っかる。

 最近見られる傾向である。

 そして最後にはロクなことにならないのだ。


(……まあ、今日くらいはいいか)


 秀星も、世界樹を見ながらそんなことを思うのだった。

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