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第二百八十三話

 世界樹の回収。

 夜にやったからと言ってばれないとかそう言うことを考えていたわけではないし、見たからと言って理解できるものではない。

 複雑なシステムの塊のような存在だが、それでも魔法的なセキュリティは甘い部分がある。

 当然、そのあたりは見破ることができるものはいるのだ。

 もちろん、だからと言って『世界樹』のシステムを理解できるわけではないし、底が知れないと思う程度だろう。


 ただ少なくとも、世界樹と言うものの一端を理解できるのなら、明らかにそれは『手に負えないものだ』と理解するものがほとんどである。

 なのでこればかりは、秀星がどうにかするまで相互不干渉になる。

 そうでなければならない理由もないのだが、手に負えないゆえに失ったら取り返しがつかないものなど、普通に考えれば爆弾よりももっと怖いものだ。


 どれほどの危険地帯であろうと飛び込める能力を持っていたとしても、その先にすら存在しないもの。

 それに責任を取ることなど誰にもできない。

 おそらく、『資格情報拡張』だけでなく『予測能力』が高い来夏なら尚更だろう。

 徹底しない場合、誰かに漏れるのは当然だ。

 そして隠しすぎると、やたら警戒される。

 ならば、出しゃばることができる難易度ではないことを示しておけば、自ずと止まってくれるものなのだ。


 最高会議とまで呼ばれる五人。

 自らの能力に自信はあるだろうが、それでも自分にはどうにもできないのに手を出すと、誰も幸せになれない上に、信用すら失うことを知っているのである。

 しかし、それでもある程度知っておいて損はないし、ある程度話せることがあることも事実。


 本当に『ある程度』である。

 さらに言えば、世界樹というのは特殊性が高すぎる。

 あの段階では、種だけを取り出すのが最適解。

 それを知らない人が多く、また納得できる説明をするための事前知識があまりにも多いという厄介の極みみたいなものだ。


 もちろん、世界樹は正常であれば、ただそこに存在するだけで近くにいる者に恩恵を与えるからである。

 主に資源的、燃料的なものだが。

 そして、世界樹の恩恵を受けようとする存在は人間だけではない。

 というより、もともと人間は単純に利用するだけであり、世界樹は人間と共存関係を構築するように作られていないという方が正しいのだが、勘違いしているものが多いがあえて放置しよう。


 結果的によって来るのは動物、及び種子を遠くに運ぶことができる種類の植物である。

 もちろん、恩恵を受けるほうの割合が高いので『共存』とは言い切れないが、それ以上は世界樹のシステムの話になるので後回しだ。


 ……とまあこんな感じに、正直項目がありすぎて、本当にゆっくり語れるときしか話すべきではない存在である。

 要約すると、『今俺がやってることが最もいろんなシステムにストレスと与えない最適解だから手を出すんじゃない!』ということである。

 ただ、アトムたちくらい上の立場になると、納得して本当に手を出してこないのでなかなか勇気がある。

 ちなみに、時間をかければもちろんアトムくらいなら秀星と同じことができるが、正直それを教える時間はない。

 ただ、長い間種子のままでいることは望ましくないが、今は本当の意味で『寝ている』ので、植えても仕方がない。


 しかしまあ、現段階で何も与えないというほど秀星も鬼ではない。


 黒の世界樹の残り物。

 それを全て寄付するということで落ちつかせた。

 部下が暴走するかもしれない。と言っていたが、秀星はこう返答した。


『暴走って言っても、結局はそいつらが、自分が正しいと思っていることをやってるだけだろ?ならその時は、俺も、俺が正しいと思うことをするだけだよ』


 とにっこり笑顔で答えておいた。

 正直、秀星はアトムの全力の苦笑いを見たのはそれが初めてである。


 まあいろいろと腹の探り合いはあったが、今は文化祭だ。

 三日目であり、最終日。

 まずはこれを楽しんでからである。

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