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第二百八十一話

 二日目。

 実は三日間ある文化祭だが、二日目になると若干雰囲気が異なる。


 そもそも、学生たちがなぜ文化祭の出し物で研究してきたことを発表するのか、と言う話をすれば、それは『アピール』のためである。

 まだまだ魔法社会には様々なテーマが残っており、それを解決するための研究を進めるものが多い。

 『研究が評価される』となれば、一部の研究室からすれば『一刻も早く個人的に話をしたい』と考えるものが多い。

 そのため、研究室長……特に、その研究会で一番の頭脳を持っているものは、そういった個人的な話をしている場合もある。


 発表する際に行うプレゼンに関しては得意なメンバーがすることが多く、頭脳メンバーがいないだけならまだ問題はない。

 メイガスフロントが決めたルールで、『発表の邪魔になることをしてはならない』となっているので、例えば話をしている頭脳メンバーにメールで質問を送った場合、『その質問に答えて返信する時間』が与えらえる。というシステムになっている。

 要するにそれぞれの発表会に対して『本末転倒を防ぐ』というものになっているわけである。


 ★


「……発表のテンポが若干遅れるようになったな」


 実際には、返答する場合に遅れるようになった。

 とはいえ、頭脳派メンバーが発表の場でしっかり話すことが出来るかとなるとそれは酷な場合もある。

 そのため、プレゼンを行うメンバーはしゃべるのがうまいメンバーとなる。

 それはいいのだが、若干遅れるようになった。

 もちろん、今までもメールでの対応だったが、今までは発表の様子や質問者の意見を高性能のカメラとマイクで拾って直接頭脳派メンバーが聞いていたのに対して、今はプレゼンしていた者の言葉でメールを打って頭脳派メンバーに送信。それを読んだ頭脳派メンバーが文面から質問者が何を知りたいのかを正確に知る必要がある。

 最悪、質問が二個、三個と経由する必要も出て来る。

 そうなれば、研究会の印象は悪い。


「まあ、それを解決する方法もちゃんとあるけどな」


 少なくとも、秀星が学校にいる間は、ジュピター・スクールの評判を気にしてもいいと考えるくらいの愛着はある。

 そのため、秀星はとあることをした。

 言ってしまえば『セフィア・サポート』である。

 ほぼ全ての研究会を回り、そして自らが持っている魔法の知識を使ってフォローする。

 もちろん、何人か混ぜておけば怪しまれないものだ。

 ほわほわしたやつと言うか、言ってしまえば『アホそうな感じ』の個体を送りこんでおけばなおさらである。


「ま、普通ならわからん個体もいるだろうが、俺が命令した以上は大丈夫だろ」


 セフィアと言うのは確かに『メイド』と言う名のシステムだが、その本質は『再現概念』である。

 主人の命令を実行するために、自らが可能なそれをフルに使って実行する。

 主人の命令では無いことをする場合、分からない個体が出て来るのだが、これは『独断専行』に分類されることがあるため。

 要するに、秀星が『命令』した以上、満足となるかどうかはともかく、妥協点と取れる程度のフォローができるということだ。


「そういうこともあるし、研究会の発表にしても、喫茶店にしても大丈夫だろうな。で……アレは今日の夜だな」


 秀星は上空に浮かぶ『黒くて巨大なモノ』を見る。

 そろそろ、黒いモヤがブレブレになってきていた。


「さて、そろそろ落ち着かないやつもいるだろうし、どうにかしますかね」


 秀星はそんなことを呟きながら、セフィアから送られてくる発表情報を楽しむのだった。

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