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第二百七十二話

 結局、剣の精鋭と美奈とかが集まって、メイド喫茶をすることになった。

 ただし、千春はアース・スクールで研究結果の発表があるので来られないとのこと。

 そして雫の『千春ちゃんは胸がないから大丈夫だよ』という言葉にアイアンクローが炸裂していた。

 意外と握力が強い。

 それはそれとして、『結局こうなった感』があるが、乗り気かどうかはともかく、見られることに慣れているものばかりなので、やりすぎなければ問題ないという判断である。雫の制御はアレシアがするだろう。多分。


 ただ、メイド喫茶というものは案外面倒なのだ。

 単純に料理を作ることもそうだが、何より内装だとかメイド服だろう。

 しかも、ジュピター・スクールは場所が決まるのが若干遅い。

 それにあわせた内装というものが必要である。


「と言うわけなんだけど、秀星君はなにかいい案ある?」


 風香が聞いてきたので、指をパチンと鳴らす秀星。

 ファンシーな料理本がならぶ倉庫兼会議室が、かなり明るくなった。


「おお、凄いです!」

「内装を変更する魔法ですか。しかもかなり鮮やかです」

「まあ、ほぼ自動化してるからな。ちなみにあのカーテンだが」


 秀星は窓にかかっているカーテンを指差す。


「実はミサイルも防げる」

「……内装を変更するんじゃなくて、障壁魔法の応用なの?」

「そのとおりだ。見た目のディティールを最大限に考慮した設計だとこうなる」


 いろいろな技術を無駄遣いしているが、それが秀星という男である。


「まあでも、そういう魔法があるなら大丈夫ね。それにしても、料理って決まらないなぁ……」


 優奈が『メイド喫茶イチオシレシピブック!』というどこから持ってきたのかよくわからない本をペラペラめくりながら呟く。

 まあ、もとよりこういうのはなかなか決まらないものだ。

 凝ったものだと作るのがめんどくさそうだからである。


「むうう……秀星さんは、『これだったら毎日これしか食べられなくても問題ない』と断言出来るようなものってあるですか?」

「話が重い気がするぞ。メイド喫茶だよな」

「一応参考意見として聞いてみたいです」

「ふーむ、毎日同じものか……日替わり弁当だな」


 風香が吹き出した。


「……それを言われるとはおもわなかったです」

「だろうな。だが、毎日同じものなんて言われるとそう言わざるを得ないぞ。まあ、別に普通でいいんじゃないのか?第一、メイド喫茶の食事のメニューって、内容より名前が凄いことになるだろ。ここで迷ってたら先に進まないぞ」

「それもそうですね」


 うなりながら本を見始める女性陣。


「じゃあ、ちょっとメイド服考えてる方に行ってくる」


 そういって、秀星は倉庫を出た。

 とはいっても、そう遠い場所にあるわけではない。

 部屋の前に立つとノックをする。


「おーい、入っていいかー」

『いいよー』


 中から雫の声が聞こえたので、内に入る。

 全員が本を広げて唸っていた。

 いや、雫だけはノリノリだが。

 とはいえ、考えているメンバーが雫、羽計、エイミー、美奈の四人である。

 正直、雫が暴走し、美奈が賛同、羽計とエイミーが制御しているといったところだろう。

 話が進まないのは明白である。


「秀星君。ケモ耳っていると思う?」

「……」


 秀星はなんとなく察した。

 これはもうミニスカまでは確定しており、その先に踏み込むかどうかという話なのだと。

 視線を変えると、美奈はすでに妄想状態に入っており、羽計は顔を歪め、エイミーは苦笑している。


「……流石にその段階になると多数決のほうがいいと思うぞ」

「あれ、そうかな」

「ああ、確実にやばいことになるからな」

「なら、他のこともいろいろ決めて、まとめて多数決にするよ」


 他にもやばい項目があると言うことなのだろうか。

 秀星はため息を吐きながら部屋を出た。


「ケモ耳ねぇ……セフィア」

「はい」


 セフィア登場。

 しっかり頭にケモ耳をつけて、お尻にしっぽまでつけていた。

 まあ、可愛い。ギャップもかなりある。

 ただなんというか……。


「……あくまでも俺個人の意見だが、もうちょっと小さい子がやったほうがいいな。何となくそう思った」

「そうですか」


 セフィアが指をパチンと鳴らすと、もっと幼ない端末のセフィアが出現。

 銀髪碧眼で、身長が女性の平均と比べるとちょっと高いセフィアを幼くしたような雰囲気だ。

 で、しっかりケモ耳と尻尾がついている。

 それに加えて、胸元は空いており、最高端末の方では考えられないほどスカートが短い。

 身長で言えば美咲くらいだろう。

 わざとなのは分かっているが、もじもじして恥ずかしそうにしているのがすごく可愛い。


「うん。やっぱりこれくらいがいいな」


 秀星は頷いた。

 それを見たセフィアは、秀星をロリコンと判断したほうがいいのか迷うのだった。

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