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第二百五十九話

 やるとなれば速い。

 これは別の言い方をすると『即断即決』だが、あまりにも早いそれは『時期尚早』である。

 ただし、あまりにも強い確信と言うのは人を動かす原動力になるものだ。


「……何か来てるな」


 六日目の夕方。

 普通なら学校には人は少ないのだが、特別な補講が設けられているので全員が来ている。

 そしてその中で、秀星は、大勢がこの学校に向かって襲撃して来ていることを察知していた。

 今までは大した数ではなかったのに、ここにきてかなりの数だと感じる。

 そして、それはクラスメイトの中にも感じているもの達はいる。


「秀星君。どうする?」

「俺が決めることじゃないんだが……この学校を狙ってるってことは、ある程度その目的もわかってるんだよなぁ。悲しいことに」

「目標は秀星君だね!」

「……何を持ってきているんだ。勝てるとは思えないが」

「そうですね。私もそう思います」


 いろいろ言っている剣の精鋭メンバーだが、共通しているのは大した脅威ではないと考えていることだ。

 だが、ここで放送が入った。


『襲撃警報・レベル4が発生しました。対抗マニュアルに従って行動してください』

「「「知らねえよそんなマニュアル!」」」


 ツッコミ三人組が元気よく叫ぶ。


「……秀星君。対抗マニュアルの内容って知ってる?」

「レベル4か。まあ要約すると……『ヤバそうなら逃げろ。勝てそうならやれ』だ」

「自己責任!?」

「そうだな。秀星の言う通りだ」


 羽計にまで納得されてしまうと何も言えなくなるクラスメイト。

 その時、宗一郎が隣の教室から入って来た。


「秀星は迎撃に行ってくれ。他の剣の精鋭のメンバーは避難誘導だ。任せたぞ」


 そういうと、宗一郎は走って行ってしまった。


「……どういうこと?」

「戦ったら何かがヤバいのかな」


 ざわついているクラスメイト。

 秀星はパンッと手を叩いて、自分の方に向かせる。


「とにかく、皆は避難した方がいいってことだ。俺は迎撃に向かう。まあ……いつも通りだろ」


 いつも通り。と言う言葉を聞いて、なんとなく安心するクラスメイト。


「ちょっと言ってくる。あ、襲撃犯とあっても、戦闘は必要最低限だ。避難用のシェルターに入っててくれ」


 そう言うと、秀星は窓から飛行魔法を使って飛びたって行く。

 残されたクラスメイトはポカンとしていたが、すぐに正気に戻って行動し始めるのだった。


 ★


「あれか」


 秀星は、こちらに突撃してきている大型戦車を見ながらそう思った。

 ものすごく幅の広い大通りがあって、戦車がそれを使って走ってくる姿はなかなか爽快と言えば爽快だが、完全に敵なので何も言えない。


「……ん?」


 秀星は戦車の前に誰かが立ちはだかったのが見えた。


「おりゃああああああ!」


 なんと、戦車を持ちあげて他の戦車にエイッと投げている。


「まあ、こんなことが出来るのは一人しかいないか」


 余裕がありそうなので電話してみる。


「もしもし」

『おう、秀星か。こりゃ一体どういう状況なんだ?』

「襲撃して来ているだけだ。完全に敵だから問題ない」

『わかった』

「しかし、戦車を持ちあげて他の戦車にぶつけるとは……」

『何言ってんだ。戦車っつっても車なんだから、ひっくり返したら動かないに決まってんだろ』

「いやまあ、そうなんだが……」


 人に取って楽なことは異なる。

 秀星は、何となくそんなことを思った。


「とりあえず、大通りの戦車は任せた」

『おう!なんか別の方向からも来てるみたいだから、そっちは頼むぜ』

「ああ」


 通話終了。

 来夏は戦車の主砲をもぎ取り始めた。


「……」


 ニューロンがスパークしてきた秀星。


「まあいいか」


 選んだ選択は思考放棄だった。

 すぐに別の大通りに行く。


「さてと……ん?」


 全身武装の魔戦士がこちらに向かって進軍している。

 緑色のラインが入った武装の数々。

 よく見ると、緑のラインは水が循環しているような感じで中が動いていた。


「一体どういう武装なんだろうか……」


 考えていても仕方がないので突撃する。

 先頭にいる魔戦士にもわかる位置まで来ると叫び始めた。


「おい!あいつ、朝森秀星だ!」

「よっしゃ!今回の六人の目標の一人だぜ!」


 目標は六人。

 なお、秀星が飛んでいることには驚いていないようだ。


「あと五人……なるほど、ある程度何がしたいのかはわかった」


 見ると、全員が銃を構えている。


「撃ち落とせ!」


 そして発砲。

 しかし、秀星には当たらない。

 ひょいひょいとレーザーや弾丸を回避していく。


「こ、この弾幕を避けきるだと……」


 秒間一万発なら寝起きでもできる。

 それはそれとして、秀星はマシニクルを構える。


「さてと……」


 引き金を引く。

 次々と放出されるレーザー。

 当然のごとく命中していくが、効果が薄い。

 というより、当たった瞬間から回復している。

 その回復能力が異常だった。


「……明らかにおかしい。一体何を使ってんだこいつら」


 秀星は少し興味を持った。


「こんな装備を持った奴が大勢……それなりに本気にならないとだめかな」


 面倒なことになったと思った秀星。

 大通りの数は八つ。

 それ以外からも攻めてくるだろう。


「俺にできるのは、この大通りに、こいつらの中で一番の戦闘力があるやつを呼び寄せるくらいか」


 秀星はめんどくさそうな表情を隠そうともせず溜息を吐いた。


「その状態だと、俺はここから離れられないだろうな。ま、他の部分は他の連中に任せますかね……」


 秀星はマシニクルを構えなおした。

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