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第二百四十六話

「それはそれなりに難易度の高いものを言ったはずなんだけど……まあ、秀星だから当然か」


 アース・スクールの中で自室に向かって歩いている千春。

 今の彼女は白衣姿だ。

 下には普通に制服を着ているのだが、数代前の生徒会長、糸瀬竜一(いとせりゅういち)が『白衣って中にいろいろ仕込めて便利だよな』みたいなことを言って、実際にいろいろ仕込めるものをデザインの白衣を作ってしまい、しかもどんなものでも仕込めるようカスタマイズ可能と言う無駄に高性能なものになって、しかもそれを工業でライン生産方式で作れるようにレシピまで開発した。

 結果的に、アース・スクールの中で生産職関連につくものは、基本的にこの白衣が貰えるのだ。


 ちなみに、仕込んでいるものがそれほど大きくないものであれば、何を仕込んでいるのかさっぱりわからない。

 なので、今の千春のようにケースを持っているものは、何か大きなものを入れているか、白衣の方に工具以外の何かを仕込んでいるかのどちらかである。


「さて、届くとすれば多分今日の夜には来るから、それまでに仕込みでも――!?」


 千春は自室のドアを開けた。

 近年、この学校の設備はかなり進化している。

 簡単に言えば、先ほど言った糸瀬竜一と言う生徒会長は、『ウィズダム・プラントを使いこなせる』ほどの実力者だったため、このようなことになったのだ。

 千春が驚愕したのは、そんなアース・スクールの自室と言う環境で……すでに来客がいたからである。


「……か、影葉(かげは)様」


 驚愕している千春の前で、ベッドにちょこんと座っているのは女の子だ。

 立ち上がってもそこまで大きくは感じられないであろう小さな体で、黒い髪をポニーテールにしている。

 しかも、小さな体に似会わず大きな胸で、保護欲をそそる見た目だ。

 マフラーを首に巻いており、口元が隠れているのもアクセントだろう。

 そして、この学校の制服であるセーラー服を着ていた。


「……あの、一体何か?」

「……これ」


 少し沈黙があったが、影葉の小さな手から封筒を渡される。

 ……先ほどまでは確実に持っていなかったのだが、この少女にとっては別に普段通りの動作でしかない。

 見た目通りの年齢と言うか、普通に十四歳のはずなのだが、千春ではまず勝てない相手だ。


「ここで読んでっていってた」


 千春は差出人をみる。

 そこにかかれていたのは、『新道英司(しんどうえいし)』と言う名前。


「えぇ!?」


 簡単に言えば、千春が『まずないだろ』と思っていた相手である。


「ちょっと、影葉様。これって一体どういう……あれ?いない!」


 先ほどまでベッドで正座していたはずの影葉がいなくなっている。

 実のところ、千春は影葉を何度か見ているのだが、上半身が動いているところを見たことがあっても、下半身が動いているところを見たことが無かった。

 それほどの実力者と言うことになるのだが、あんなみためなのでなんだか釈然としない。


「それにしても、英司様からの手紙……読みたくないなぁ」


 本当の意味で、秀星と張りあえる相手だ。

 地球がどうなるのかわからないので激突してほしくない相手でもある。

 だが、読まなかったらそれはそれで詰むので、読まなければならない。


「……封筒が一つ。これだけにここまでビビる日が来るとは」


 千春は面倒なことになったと溜息を吐くのだった。


「外部協力者って楽じゃないなぁ……」


 最終的に、千春はそうつぶやくのだった。

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