第二百四十五話
爆弾はすべて撤去された。
来夏を相手に設置型の罠という、相性が悪すぎる手段を用いた人たちが悪いので、同情はしない。
「聞いた話だけど、ジュピター・スクールにまた要人が集まるみたいね」
「……千春。それ、どこから漏れたんだ?」
ジュピター・スクールのダンジョンの中。
外部とは電波が全く通じず、電子機器を使う場合はローカルで役に立つものに限られるという現代人泣かせの環境で、秀星は『剣の精鋭』のエンジニアである千春と通話していた。
「私が通ってる『アース・スクール』にも名家とか名門の出身がいて、その生徒たちが言いふらしてた」
「……それってさ。名門って言うけど上には上がいそうなレベルか?」
「そんな感じだけど……それがわかるってことは、すでにそっちでいろいろ起きてるってこと?」
「俺達の方ではそれなりにな。そっちは?」
「私達の方はそうでもないわよ」
確かに外部からの攻撃というものはなかなか消えないものだが、言いかえるなら教師陣が経験するということでもある。
教師たちでも単独で解決できるレベルならあるようで、別に頻度が増えている様子もないらしい。
「……となると、ジュピター・スクールを狙い撃ちしてるってことか」
「アンタがいるのに狙い撃ちされるって……切り札がまだなにかあるのかしら?」
「多分残ってるだろ。ぶっ飛んだ思想を持った奴らが多数集まっているみたいだからな」
「利害の一致みたいな感じ?」
「それもあると思うが……まあ、個性が言うほど強くないような感じがしなくもないけどな」
「それはアンタの中で『変人』という定義が来夏だからじゃない?」
「……ありうるな」
たしかにそう考えているかもしれないと思った秀星。
「そうだな。来夏に比べたら皆普通か」
「まあ、その判断ができるアンタも大概だけど、基本はそうね」
要するに、納得している千春も同罪ということである。
「しかし、また要人が集まるとはなぁ」
「どうなると思う?」
「いやまぁ、せっかく集まれるんだから集まってしまおう。みたいな感情を感じなくもないが、重要なのは襲撃かましてくる方がどう考えるかってところだからな」
「してくると思う?」
「俺だったらやるよ」
「やるんだ……」
「だって罠も護衛も本人も怖くないからな」
「理不尽ねぇ」
「何を今更」
「それもそうね」
「で、用件は報告だけじゃないよな」
「そうよ」
即答してきた。隠すつもりは毛頭ないらしい。
「ちょっと手に入れてほしい素材があってね。ダンジョンで取れるんだけど……」
「ああ、なら、いまダンジョンの中にいるから、言ってくれて構わないぞ」
「アンタ、メモも取らないのね」
「記憶力がいいからな」
「うらやまし……ん?ダンジョンの中にいるって?」
「そうだ」
「電波通じるの?」
「つなげた」
「……あっそ」
諦めた千春。
そして、ほしい素材を言い始めた。
……三十種類くらい。
(……メールを送信するほうが絶対に確実だと思うのは俺の気のせいか?)
他にもいろいろ気にするべきことはあるはずだが、そのあたりのことは軽くスルーして素材を集め始める秀星であった。




