第二百二十六話
時間があったので自由時間があったが、言うほどまとまった時間ではないので集合時間になるのも早い。
ジュピター・スクールの正門に集まって、二つのクラスでそれぞれ点呼をして、中に入る。
外から見ても大きかったが、近くに来ると尚更わかる。
既にグラウンドで実技の授業をしている者もいる。
手続きのために職員室に向かっているのだが、その間で言えば小学生くらいの子が多かった。
小中高一貫なのでそう見えるのも確かだろう。
あるいは、学年が上がると校舎の上の方にある教室で授業を受けることになるから見えないだけなのか、わかるのは別にたいしたことではないということだけである。
「すごく大きな校舎だね」
「そうだな」
雫がきょろきょろと見ながらつぶやく。
秀星は確かに学校としては広いと思いながら答えた。
「そう言えば、さっきまでは嫌な視線があったけど、今はそこまで多くないね」
「いや、厳密には多かったけど、俺が隠れてみてるやつをガン見しておいたから離れただけだと思う」
「秀星さんらしいですね」
風香が感じていた視線が無くなったと思ったが、まさかの秀星が逆に追っ払ったと聞いてエイミーが苦笑する。
秀星としては、別にあこがれているというのであればどうしようと問題はないのだが、明らかに侮蔑であるとなれば気持ちいいわけがない。
なのでガン見しておいた。そうすることで、何も言わなくても『分かってるんだぞ?』と伝えることが出来るので楽だ。
「それにしても、たまに遠慮のない視線が来る時があるね。可愛い女の子からの視線もいっぱいあるし、私は真正面から相手になるけどね。グフフフフ」
「小学生が多いエリアで変な声を出すんじゃない」
どこからどう見ても『変なお姉ちゃん』扱いになる。
別に雫個人がそれで見られるというのなら別に秀星も止めはしないが、下手すると秀星も『変なお姉ちゃんの仲間』と思われるのだ。それは風評被害である。
まあもとよりゴリラがリーダーなので『変なお姉ちゃんのメンバー』見たいに思われるかもしれないが、そこはもう仕方がない。
所属する段階でそのあたりの評価の改善は諦めていたからだ。
というか……校舎広すぎである。
★
職員室で手続きをして、全員がこの学校で必要なカードを全員が受け取って、それぞれの教室に向かった。
「なんだか、適当に掃除された感があるような……」
「この段階から差別をしてくるとは……選民思想ってすごいね」
「教えるだけなら簡単だからな」
「アメリカでもここまで露骨なのは珍しいですよ」
一応やっているのだが、そこまで言うほど掃除されていない。
こっちが文句を言って向こうが反論してきたら清掃業者のプロを呼んで叩き潰したくなるくらいである。
「まあいいや『クリーン』」
魔法を使って一発清掃である。
クラスメイトがぽかんとしているが、すぐに『まあ秀星だからな』と納得した。
こういうときにめんどくさくならないので、ある程度実力を見せておくのは重要である。
「さて、それではいろいろと確認しましょうか。この学校にもいろいろルールはありますが、その中でも注意するべきものがいくつかありますから、しっかり聞いてくださいね」
先生が教壇に立って説明し始めた。
それを聞きながら、秀星は『うーわー』と思っていた。まあ呆れただけである。




