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第二百十二話

 拠点に乗りこんだわけだが、誰が最初に奥まで辿りつけるのか。

 その答えとしては、断然リアンである。

 メモリーバイトは確かに独立しているかの如く、リアンとしても制御が難しいと言わざるを得ないものだが、独立しているゆえに、リアンからみて必要以上に食べている時がある。

 防衛におけるもっとも重要な部分の防御はそれ相応の人材を用意しているはず。

 さらに言えば、フロアごとに、そしてそれぞれの小さな集まりの中でリーダーがいる。


 メモリーバイトは、そのようなもの達の記憶をつまみ食いをしている。

 無論、リアン本人も戦闘中にちょっとした会話を挟むことで、リアンに意識を向けさせながらもそう言った記憶を奪えるようにうまく調節している。

 とはいえ、別にリアンは話術を鍛えているわけではなく一般人と同じなので、奪える量は多くはない。

 ただし、『何を考えたのか』という情報があればそれを糧にするため、だんだん頭の中に地図が出来上って行く。


 秀星からは『スキルっていうのは、その多くは確かに道具でしかないっていうのは事実だ。だが、普通よりも独立している部分が多いスキルっていうのは、道具として見るんじゃなくて人に近い何かとして考えた方がいいぞ』と言われたこともあり、使うというよりはつきあっているような感じで拠点をどんどん進んで行った。

 そうなれば、拠点を攻めている者たちの中で最初に奥にたどり着けるのはリアンである。


 とはいえ、リアンの疑問としては、あまりにも電子機器の制限が多いこの拠点の内部で、一体どうして自分と連絡が取れるのかという部分もある。

 秀星が規格外だといえばそれまでだし、なんとなくもうそれでいいような気がしなくもないが、一度気になると頭によぎるのが人間と言うもので、リアンも変わらない。

 それに加えて、どれほど下に降りていっても、秀星と合流できない。

 秀星はすぐにメールをしてきたし、大きな問題に直面していることはなさそうだった。

 少なくとも、どこか怪我をしたということはないだろう。あまり怪我をするところが想像出来ないが。


 いろいろ考えるリアンだが、もとからリアンはソロで戦ってきた。

 相手が誰であろうと、敵なら倒すだけである。

 リアンは普通に戦闘員だが、普段は公安のデイビットに呼ばれて行動する魔戦士だ。

 ならば、こういうときは私情を挟むべきではない。

 そう考えながら、情報を集めて、リアンは進んでいるというわけだ。


 結果的に、たどり着くのは一番早い。

 最も、彼がこれから戦うことになる相手は、そんじょそこらの相手ではない。と言う点においては、ある意味、秀星に仕組まれたとも言える。

 もともと、秀星は一人で勝てる相手だ。

 わざわざリアンにやらせようとしていることくらいは、確信はなくとも想像の範囲内である。

 ただし、リアンは秀星が大雑把にすることはあっても意味のないことはしない主義だと考えているため、それにも何か大きな意味があると考えている訳だが……。


 さて、どうだろう。

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