第百七十六話
頭がおかしいというか、特に何も考えていないやつ程、行動するのは早い。
それはある意味当然である。
そして、そのストッパーとして今まで行動していたアレシアが別に止めようとはしない。
そうなると、必然的に『来れる人は全員来る』のだ。
「やっほー!三週間ぶりだね!秀星君!」
空港で大はしゃぎしている雫を発見し、変わらない様子だと判断した秀星。
その雫のそばにいるメンバーを見て、どうやら全員が来ることができたようだ。
魔法社会の名家の出身のものが多いので何人か来ないのではないかと思ったが、どうやらそう言うものではないらしい。
しっかり全員が来ている。
とはいえ、雫と来夏が得に何も考えていないうえに、なんだか反論しても意味がないような気がしてくるので、周りのメンバーがやけくそ気味になるしかないというのが現状だろう。
「ああ。三週間ぶり。元気だったか?」
「ばっちり元気だったよ!」
秀星の質問に対して胸を張って元気な様子の雫。
まあ、最初から分かっていたので効いてはいない。
バカは風邪をひかないのだ。同じ理由で秀星も風邪をひくわけがない。
「雫がいきなり言いだすから驚いたぜ。ま、基本的にフットワーク軽いからな!金だけは有り余ってるし!」
太っ腹と言うか大雑把な来夏がそう言うと、なんとなく全員で来ることになった理由を察することが出来るのだから不思議である。フットワークの軽さ。という分でいろいろ考えさせられるのだ。
「顔見せも終わったからな。丁度暇になっていたのは事実だ」
「私もそうだね。まあ、もともと見せに行くところは少ないけどね」
羽計と風香がそう言うが、すこし疲れている雰囲気だ。
仮面を作りまくっていたのだ事実だろう。
今回は羽目を外すことが出来るだろうから、いろいろと息抜きになれば幸いである。
「私たちはいろんな店を回ってたけど、魔法で発展してきたエインズワース王国そのものにも興味はあるわ」
「そうですね。魔装具も基本は魔法ですから、何か学べるものがあるといいなって思ってます」
千春とエイミーに関しては勉強目的もあるようだ。
「海に行くって話だけど、なんか夏祭りっぽい雰囲気でしょ?思いっきり楽しむために来たのよ」
「美咲も楽しみです!ポチも楽しみにしているですよ。ね、ポチ」
「ふにゃあ~」
優奈と美咲に関していえば……そういうお年頃である。
ポチは海に入って大丈夫なのかと思ったが、仮にだめでも付与魔法で何とかなる。
あまり気にするほどではない。
「結局……なんか暇になってきたなって思ったからみんなで来たってことか」
「おう。それに、なんか最近物騒じゃねえか。骨のあるやつと戦えるんじゃないかってワクワクしてるってこともあるぜ」
来夏は獰猛な笑みを浮かべてそういった。
どうやら、秀星が日本にいなかったので、その間ダンジョンで深いところに潜れずに欲求不満だったようだ。
「まあ、たぶん何かがあると思うぞ」
否定はしない。
また来るだろうと思っている。
いやな予感と言うのは当たるものだ。
「はぁ、やっぱりそうなるのだな」
「まあでも、秀星君がいるんだし、問題ないって」
「まあ秀星の場合、後だしじゃんけんというより、手首を斬り落としにかかっていると思うがな」
「失礼な」
言いたい放題言われる秀星だが、別に反論はしなかった。
さて、明日どうなるのだろうか。これ。




