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第百七十四話

「やっと終わったー!」


 書類が片付いて綺麗になった机の前で妖○体操を踊りだすアースー。

 あまりにも嬉しすぎて思考がぶっ飛んだ方向に進んでいるようだ。末期症状である。

 というか、歓喜の踊りのつもりなのになんでその体操をチョイスするのだろうか。

 妖怪のせいなのか?幽霊(アーロン)はいるけど。


「まあ、また明日も来るわけだが、謁見とかも終わったのか?」

「胃が痛くなる人達に関しては終わったよ」

「思っていたより腹黒い人多かった……」


 まあ、どうせそのようなものだと思っていたことも事実なのでどうでもいいと思うことにした秀星。


「面倒なものはいろいろと片付いたからね。ちょっとやりたいことがあるんだよ!」

「へぇ……何だ?」

「この国。南に鉱山があるでしょ?」

「そうだな」

「北に何があるか知ってる?」

「……海だな」


 秀星はこの国の地図を思いだした。

 鉱山があって、それをもとにかなり稼いでいるエインズワース王国だが、北には海があり、これがなかなか綺麗である。

 ちょっとしたビーチとしてかなり整っているのだ。


「そうだよ。行きたいんだよ!」

「そうか……行けばいいだろ」

「秀星も一緒に行こうよ!」

「何故に?」

「実はあの一件でね。僕でも倒せない人がいるっていうのが国民もわかっちゃったんだよね。まあ、それはそれで自分で研鑽するようになった人達もいるから悪いことじゃないんだけど、逆に、僕が一人でで歩くのはダメなんじゃないかってイメージが付いちゃってね……」

「ああ……なるほど」


 神器無効と魔法技術向上という、アースーからすれば天罰のような組み合わせだったということもあるにはあるが、確かに負けだったということも変わりはない。

 不安だという人がいても不思議ではない。


「それにしても、国王が海水浴って……」

「まあ、所詮人気取りだからね。こう言ったサービスも必要なのさ!」

「もうちょっと威厳や風格があれば問題ないんだけどな」

「この女っぽい貧相な体でどうしろと」


 自分で言うなよ。と秀星は言いそうになったが、これ以上は藪蛇である。

 少なくとも突いていいことはない。

 というか、いくらサービスとは言え水着姿って……。


「で、俺とアースーだけで行くのか?」

「そのつもりだよ。流石にアレシアたちまで巻き込むわけにはいかないからね」


 変なところでそういう兄貴っぽいところを見せても仕方がないと思う。

 今更、と言う意味で。


(まあ、来るとなれば勝手に来ると思うが……)


 秀星はそう思ったがあえて言わないことにした。


「ていうか、アーロンはどうだったんだ?」

「結構積極的にいろいろやっていたみたいだけどね」

「そうか……」


 かなりアウトドアのようだ。

 というか秀星の視界の端でサムズアップしている。

 死んでも元気な人は元気なのか……。


「さて、それじゃあ僕は水着選んでくるから、秀星もちゃんと買っておくんだよ!」


 そういって走りだすアースー。

 さすがに国王の執務室に一人で残るわけにはいかないのでゲストルームに戻ることにした。

 その気になれば水着なんてその場で作れる。


「さて……ん?」


 着信だ。

 見ると『バカ』と書かれている。


「なんだ?雫」

『久しぶり!秀星君。今のところどうなってるの?』

「次に何かがあるかもしれないけど一応ほとぼり冷めた」

『なるほど……今まで忙しかったんだね』

「そういうことだな」

『ほとぼり冷めたってことは、これから何かするの?』

「ああ、なんか海水浴に行くって」

『海水浴ねぇ……あ、風香ちゃん。タブレットどこにあったっけ。え、テレビの横のゴミ箱の下?あ、あった。ありがと!……むひょー!めっちゃ可愛いね!』


 ツッコミどころ満載だったが秀星はスルーした。


『ねえ、海水浴に行くって本当なの?』

「さっき水着買いにいってたぞ。たぶんそうなんじゃないか?あの様子だと、明後日には実際に海に入ると思うぞ」

『ムフフフフフフ。なら、私たちも行くよ!』

「え?」

『それじゃあまた!』


 ツー。ツー。


「……まあいいか」


 秀星は思考を放棄した。

 さすがの雫も、国王に対してやらかしたりはしないだろう。

 忘れているようだが、アレシアと言うストッパーがこちらにいるからな。

 チラッとカレンダーを見る。


「……もうそろそろ夏祭りか……確か、着物を売りだしてる店が多かったな」


 この国でもそういうイベントはあるようだ。


「いつ日本に帰れるかわからんし、チーム全員であっておいて損はないか」


 厄はあっても損はない。というのが剣の精鋭である。

 まあ、こればかりは今更である。


「さて、残っている問題は少ないが重要性は高いから、さっさと片づけるか」


 秀星はベッドに寝っ転がった。

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