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第百六十三話

 アースーが国王になった。

 それに寄って、いろいろと掃除してすっきりしたメンバーをそろえることが出来た。

 中には新人もいるのだが、エインズワース王国は財政的に余裕がある。

 そもそも、鉱山を使って金を国にいれまくっているので、そもそも借金をする必要すらないので、当然といえば当然だが、とにかく余裕はあるのだ。


 しかし、アースーが国王になることが想定外だった者たちもいる。

 様々な偽造書類を使って、魔石鉱山で入ってくる金を流して自分たちのところにため込んでいる者はそれなりにいる。

 国王になったジークフリートを利用することが出来れば、王の判子を使えることと同じだ。

 それを利用して、もっと贅沢に過ごすつもりだった。

 しかし、それはまるごと破城した。

 確かに、まだ資金は残っている。

 だが、官僚たちまで掃除され、今の彼らは役職を失い、『権限』が消えた。

 これ以上の不正は難しい。


 ……あと、アーロンのあの嫌がらせもあって、バカ四天王の怒りは最高点に達している。


 アースーを失脚させてジークフリートを新しく国王にすれば、とまだ本気で考えているものは多い。

 要するに、『アースーが国王になったことで不祥事が多くなった』となれば、目的は達成される。


 ……問題なのは、ジークフリートにはもう国王になる気などさらさらないということと、官僚団全員にセフィアの『端末』が付いており、常にミスがないか隠れて確認しているので、不祥事が起こらない。と言うことだろうか。

 それに、仮に町で超能力者が暴れたとしても、それをアースーが原因だと思うものはいない。

 秀星も、すでにそっちに手を出す必要はないと思っていた。

 アースーのイメージダウンにつながるので止めていたのだが、もうすでにその必要はないのだ。警察諸君は頑張ってくれ。


 ★


『まあ、一応は僕の望む通りになったかな』


 アーロンは紅茶を飲みながら考えていた。

 幽霊なのでふらふらと浮いているが、元が王だからだろう。かなり所作は優れている。


『それにしても、幽霊になった後でも紅茶が飲めるとは……人生って言うのは分からないね。もう終わってるけど』


 呟くアーロン。

 彼は今、そのバカ四天王がいる場所に向かっている。

 ちなみに、幽霊なので喋ったとしても空気が振動することがなく、音がないのだ。悪意はあるが。


『それにしても、親子でかなりにていると思う場合もあれば、似ていないこともあるんだなぁ……』


 アーロンはポケットから一枚の写真を出した。

 そこに写っているのは、秀星に見えなくもない。

 だが、それは顔だけだ。

 というか、表情にしたって獰猛な笑みを浮かべていて、左頬に十字傷がある。

 頭に白いハチマキを巻いており、『天下無双』をかかれていた。

 首から下はバキバキの白装束である。

 シャツは着ておらず、昔のヤンキーだってここまでしないと思えるほど『何かヤバい』

 コートの背中部分には龍のイラストがある。

 オマケになんかシルバーアクセサリーが過多だ。


 総合すると……『来夏の五倍はめんどくさそう』である。


『これが秀星の父親だもんなぁ……しかもこれが普段着だし……』


 アーロンは世界の不思議について考えているような気分になった。

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