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第百五十三話

 異世界にも魔石鉱山はあったが、確かに大量に魔石をとれるが、需要と供給速度から考えて二十年が限界であり、そこから先は魔石が取れずにつぶれていく国家も多数あった。


 外国からどんどん人が入ってくるため、不動産を営業するだけで次々と金が入って来るので、鉱山が発見されるまではごく普通の生活をしていたのに、豪華絢爛な生活をしていたことで戻ることができず、働くことができないというケースはそれなりにあった。

 それなりにあった。ということは、鉱山の発見回数がそれなりに多かったということでもあるのだが、面倒な部分は置いておこう。


 ただ、優れた魔石鉱山が発見されたからといって、武力的に何か優れているものがあるわけではない。

 鉱山があった国は近くの過激な大国に攻め込まれ、植民地にされ、もともと住んでいた人間が鉱山奴隷として働かされるという状況は珍しくなかった。


 ただ、分かっているのは、その鉱山の寿命を正確に把握することだ。

 いつまで大丈夫なのか、それが分かれば何も問題はない。


「まあ、だからと言って取れる量を無制限にすると国際的にはやばくなるんだけどな……」


 物事と言うのは、確定していないからこそ議論を重ねる。

 そうして、無数にあるものから一つを手繰り寄せていくのだ。

 しかし、無限だとか無制限だとか、そういったことが確定すると、利権だとかそう言うレベルの話ではなくなって来る。

 自分たちがいなくなった後、または、長い間いられなくなった時、攻め込まれる可能性は十分にある。


 表でどうなるのかが問題なのではない。

 水面下で実権を握られれば、敗北したことと同じだ。

 だが、水面上ではもと通りとなる。

 だからこそ、闇と言うのはバカにできない。


「お、この山だな」


 周辺施設までしっかり整った鉱山の入り口を発見。

 中からは魔石を積んだ荷車を引っ張ってきているものが多数いた。

 近くのトラックに乗せて、それを運んでいる。


「エインズワース王国民が全然いないな……」


 基本的に中に入るのは外国人だ。

 中には日本人も見える。

 バイト代がいいのだろうか。夏休みだし。

 飛行機に乗って王国まで来て、必要経費を諸々払ってもまだお釣りが来るレベルで給料があると聞いている。

 とはいえ、本当にくるとは思っていなかったが。


「まあ、細かいことはいいか」


 秀星はオールマジック・タブレットを出して、『寿命鑑定』の魔法を使った。


「これは……アーロンがなにかやったな」


 先代国王が何かをやらかしたようだ。

 秀星が読み取った寿命。

 それは『実質無限』であった。


「まあ、そういうことなら仕方がない。鉱山を守っていきながら、なんとか周辺国家に食われないように考えていくか」


 アースーもこのことは知らないはずだ。


「第一王子に言うのは無しだな。どんな暴走をするのかわからんぞこれ」


 野心家な人間に金が実る樹の情報を教えるとろくなことにならないのだ。

 とはいえ、必要になればアースーに教える程度でいいだろう。

 アースーも、神器を所有するようになってまだ日が浅い。

 アーロンが何かをしたのはなんとなくわかるが、それを教えても気持ちの整理がつかないだけだ。


「これからすべきなのは……官僚をどうにか揃えていくしかないか」


 表にも裏にも金が回っているはずだ。

 ある程度整えておくほうがいい。


「それでいて早いほうがいいな。王が不在なんて、国民にとっては不安どころの騒ぎじゃないぞ……」


 決めることは多い。

 することの幅も広い。

 前途多難であることは最初からわかっていたが、さて、どうなるだろうか。


「第一王子がまともな人間だったら話が早いんだけどなぁ……」


 そうであれば交渉の幅が広い。


「あと、命令系統で見ると四人くらいバカがいるな。こっちも対応しないと……」


 秀星は頭を抱えた。

 とはいえ、魔石鉱山が無事なので、資金に余裕があることは確かである。

 余裕があるうちにしかできない努力もあるのだ。

 なぜそれを秀星が考えなければならないのかがわからないのだが、最低限揃えてさっさと継承戦をやってしまおう。


 王にならなければできないことも当然あるのだから。

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