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第百四十五話

「むふふ……秀星君はともかくとして、アレシアがいない今!私の時代だああああ!」


 何を血迷っているのか、雫は叫んだ。


「可能な限りあんなことやこんなことができる展開に……あれ、沙耶ちゃん。なんで私をゴミを見るような目で見てるのかな」


 新しいキャンピングカー。

 剣の精鋭の新しいアジトだ。

 そんな中で騒いでいる雫だが、来夏の娘である沙耶の視線がすごく冷たい。


「まあ、躊躇もなくそんなアホみたいなこと言ってたらそうなるのも当然だろ」


 来夏が沙耶をおんぶしながらそういった。

 背負われている沙耶の目はまだちょっと冷たい。


「まあ、若い頃は何をしても楽しいので、そういう頭の悪い人はどこにでも一定数いますからね」


 軽くディスる和也。


「それにしても、秀星がいないと、剣の精鋭はあまり活動的にならないな」


 羽針はそんなことをつぶやいた。

 活動的だったというより、秀星が強くて暇だったので、適当に誘ってダンジョンに行くのが普通だったというだけの話である。

 その秀星がいないので、少女たちで組むかソロで潜るわけだが、秀星がいた頃のように深い階層まで行けるわけではない。

 もちろん、少数精鋭チームなのでソロでも十分な稼ぎを出せるのだが、秀星がいた頃と比べると少ないのだ。

 しかも、秀星は他に収入があるかのように、ダンジョンで手に入れた稼ぎはチームの金庫に入れていた。

 ものすごく強いやつがその儲けをチームの収入に全振りしていたのだ。

 チームの保有資金が多くなるのは必然である。


 活動的ではなくなったというより、気軽ではなくなったというだけの話だ。


「お父さんも、夏休みなのに稼ぎが多くないって言ってたね」


 旧ダンジョンと比較すれば、当然今年からは多くなっている。

 だが、平日や休日と比較して、その割合を出してみると、思ったほどではないようだ。

 まだ魔石や素材は十分在庫があるので問題はないし、秀星もアレシアも、やることをやれば帰ってくるだろうということで、致命的なことになる予測はない。


「思ったのですが……秀星さんはともかく、アレシアさんは大丈夫なのですか?」


 エイミーが疑問を口にする。


「む?大丈夫というのは何に対してですか?」

「最近、表に出てきたり、台頭している魔戦士たちの強さがインフレしてきている気がします。アレシアさんの実力を疑うわけではありませんが、足りるのかどうか。ということです」

「秀星だっているんだから大丈夫でしょ。それに、アレシアだって十分チートよ」

「?」


 エイミーはよくわからないようだ。


「射程っていう概念がなくなるって聞いたけど、いまいちよくわからないわね」

「なにか秘策や必勝法があるですか?」


 視線が来夏に集まり始める。

 来夏はうーんと考えたあと、思い出すようにつぶやく。


「離れたところからでも股間を殴れるっていってたな」


 一国の王女がなんてことを。

 そして股間がキュッとなった和也。


「なるほど……離れたところからでもあんなことやこんなことができるんだね!」


 思考がエロい方向に完全シフトした雫。

 とはいえ、そういうことにも使えるのは確かである。


「障害物があると無理みたいだな、射程が伸びるだけで飛ばすわけじゃないからと言っていたが」

「でも、十分強力です」

「離れたところからでも触れるようなもんだから、組み伏せることもできるのか……」

「私は遠距離アイアンクローをされたこともあるよ!」


 なぜそれで自慢できると思ったのか、胸を張る雫。

 ちなみに顔の肉という肉が顔面の中心によっていくので『とてもやばい絵面』になる。


「なんていうか……いろいろなことを邪魔するのにはもってこいの超能力ね」

「腹黒いからな、ああ見えて空気をブレイクっていうかシェイクすることだってあるぞ」


 ある意味、一番性格の悪い組み合わせなのだった。

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