第百四十一話
王宮のゲストルームで寝て、次の日。
秀星はエインズワース王国を見て回ることにした。
王宮でも様々なデータを得ることは可能だろう。
しかし、それだけでは分からないこともいろいろある。
ただし、あまり時間をかけられないのであまり多くの時間を散策に使えるわけではないが、それでも、いきなり初日ですべてを決めるというのは急ぎすぎである。
「見た目は普通の国に合わせているが、いろいろなものが薄いな」
秀星は見た感じそう思った。
エインズワース王国はライフラインが安定して供給されるレベルで魔法を研究している。
簡単な規模の魔法を言力を抑えることで『生活魔法』として技術化している。
ただし、魔法が発展しているが魔法具は少ない。
「……この状況だけでも、本当に魔法でどうにかしているっていうのが分かるな……」
魔法社会が表ではなく裏とされている地球で、ここまで魔法を研究するものがいると思っていなかった。
確かに、他の国からすれば行く必要が薄い国ではある。
そうなるように情報規制しているが、それにしても大胆だ。
「……少し沈んでいるように見えるが、それは年寄りくらいだな。四十歳以下くらいのものは悲観している様子はないし」
とはいえ、いつまでもうじうじしているよりはいいのだが。
「ていうか、そもそも国王がどんな人間だったのか知らんな。俺」
近くの図書館に入った。
目算で魔法関係の本が三割と言ったところだ。
国王についてかかれている本は多くはないが、あった。
過去の国王がどんな人物だったのか、死んでしまった国王がどんな人物だったのか。
「顔色悪いな」
アレシアが言っていたことは本当だったららしい。
あと、国王はアースーにとてもよく似ている。
並ばせてみると、親子ではなく兄弟と思えるほどに。
実際に並べたら姉妹に見えるだろうが。
「……この国、男の遺伝子が弱すぎるんじゃないか?それとも、来夏みたいに、女の遺伝子が強すぎるのか……多くのことの引き継ぎながらも革命的な技術を開発したり、無難な法整備……なんというか……無難だな」
その革新的な技術という者も、必要に迫られたからやったというだけで、流れに乗っただけとも言える。
ただし、その流れに乗るのは奇跡的にうまかった。
しかし、確認できる写真はどれもこれも地獄のような表情だが。
「毎晩頑張っていた。と言うのは本当みたいだな」
アースーと顔だけでなく性格も似ているとしたら、確かに親族や使用人からすればいじりたくてたまらないだろう。
アースーはかなりしっかりしている。
ああいったものが相手の場合、保護欲もそうだが、嗜虐欲も出るのが人間と言うものである。
「悪いところはなく、常に余裕が残る状況を続けていた。と言ったところか」
とはいえ、予備とか事前策とか、そう言った言葉が好きな人間のようだ。
万が一、と言う言葉を必要以上に恐れているような気がしなくもないが、それは今言っても仕方がないだろう。
ただ、今回の崩御は事前に防ぐことができなかったようだが。
「まあ、大体わかった」
歴代の王も、アースーのような男の娘が多かった。
エインズワース王国民のホルモンバランスが心配である。
「確かに、女性の様な顔つきなのに、男がするような恰好をしているっていうのが多いな」
一体どういう進化を遂げればそう言うDNAになるのか教えてもらいたいところである。
「ただ……死んでしまった国王。これは確実に超能力者だな」
それだけではない。
歴代の国王も、そのほとんどが超能力者だった。
ただし、それは古い時代に書かれたものであり、近年発行された記録本では、超能力者なのか魔法使いなのかをぼかして、まるで魔法使いであったかのように書いたものが多い。
「俺の手に追えるかどうかはともかく、面倒なことになったな」
事実をぼかしてまで、超能力者ではなく魔法使いが台頭するべきだと主張する人間が多いと言うことだ。
「……祈っても仕方ないか」
とある可能性に行き付いた秀星だが、この場では溜息一つで済ませることにした。
ちなみに……エインズワース王国の食べ物の味は『別に普通』であった。




