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神器を十個持って異世界から帰ってきたけど、現代もファンタジーだったので片手間に無双することにした。【連載版】  作者: レルクス
本編最終章 神器を十個持って異世界から帰ってきたけど、現代もファンタジーだったので片手間に無双することにした。編
1407/1408

最終回

 凡庸な日々を送った生徒ほど、『式』というものは退屈なものだ。


 そもそも目新しさがなく、有象無象の自覚がある者ほど、少し通過点を過ぎたような、そんな感触があるだけだろう。


 そう、特に『答辞』など、礼と感謝と決意をテーマとしたものだが……これもまた、『凡庸』にとって薄いものだ。


 『答辞 例文』と入れて検索すれば、多くのページで注意点として『長々としない』『ユニークな表現を避ける』というものが挙げられるだろう。


 ……もちろん、凡庸には凡庸なりに、よく考えたら去年とほぼ同じ内容であったとしても、そこにかける『思い』はそれぞれであり、『式』をどう思うかは自由。


 しかし、魔法社会になった今、世界が、新しい世代を迎えた。


 何より、卒業して学校から去り、新しい『戦いの場』に向かう卒業性を送る場所で、在校生の気分が高まらないのは、モチベーションに大きくかかわる。


 だからこそ……魔法学校になって一年目である昨年度は、副生徒会長を務めた古道英里が『答辞』を述べ、生徒会長を務めた鈴木宗一郎が『自由に思いを語る』という意味で『スピーチ』を行った。


 卒業式という場では、異例中の異例。


 しかし……魔法社会が表に出てきたばかりゆえに、『教育現場として異例中の異例』なのが沖野宮高校だ。


 それくらいのことをさせても罰は当たらない。

 というか、『それくらいのことをさせてもいい生徒』が、昨年度の鈴木宗一郎という男だった故に、この案は通った。


 長く語っても伝わらないのは同じなので、原稿用紙一枚か二枚。

 その程度の長さだが、『リハーサルの時点で行われると決まっていなかったスピーチ』を、宗一郎は述べた。


 そして今年度は、八代風香が『答辞』を述べ、朝森秀星が『スピーチ』を行った。


 朝森秀星という男の物語、その大きな流れがこの世界に帰ってきた、約三年前のあの日が始まりだとするなら……。


 彼の物語は、八代風香を助け出したところから始まった。

 それを知る者は少ないが、物語を締めくくる『卒業式』で、『答辞』を述べるならば、彼女がふさわしいという意見は多かったゆえに……。


 そして、式の一週間前に存在を保てずに消えていった椿たちと、未来に帰っていった星乃からのお願いということもあるが。


 とにかく、八代風香は、卒業式で『答辞』を述べて、秀星はスピーチを行った。


 古道英里、鈴木宗一郎、八代風香、朝森秀星。

 昨年度と今年度における重要なこの四名が、『式で全く泣かない』という、来年度以降の卒業生代表に強烈なプレッシャーを与えつつ……林道国枝と時島清磨がそのプレッシャーを感じ取りつつ……式は終わった。


 まあ、秀星だってまともなことを言えたかどうかとなれば、そうでもない。


 ヒントは……『父親が普段着』とだけ。





 卒業式が終わり、体育館から去っていく卒業生たちは、これから何が待ち受けているのか。


 魔法社会黎明期として、最先端に誰かが立ち続ける必要がある。


 ただ、三年間の学校生活で、『諦め』と『ヤケクソ』……そして、『絶対的なリーダー』を得た彼らは、進めるはずだ。


 体育館を出て、卒業生は友達や家族に会って……涙交じりに、次に進む。


 神器使いの決戦は終わり、どこか熱がこもらない『平穏』を主人公は歩み……


 その後ろから、彼についていくことに後悔しない者が続く。


 ――彼らの門出を祝って、良い風が吹いた。








 神器を十個持って異世界から帰ってきたけど、現代もファンタジーだったので片手間に無双することにした。


 —完—











 一人の少年が異世界から帰ってきてから始まった物語は、一度、ここで終わりを迎える。


 しかし……『少年』の物語は終わっても、まだ、『世界』の物語は終わらない。


 時間というものは、基本的に『進むのが正常』だ。


 その時間を止めようとすることは時間操作だ。異論は認めない。


 砂は流れる。時間の中を流れる。


 その砂を握る者は、『語るべき時間』を歩む。



 ――19年後。


「今日は沖野宮高校の入学式ですううう~~~っ!」



 世界は白地図に似ている。物語は記載に似ている。


 父親が作った白地図は、まだまだ白い部分を残しながらも、長い時間をかけて書かれた文字の確実性を薄れさせ、白く戻っていく。


 だからこそ、長い間行っていない場所には、行く価値がある。


 父親が作った白地図と全く同じ場所を歩んだとしても、絶対に違う色が出てくる。


 そんな、始まり。


 そんな、『大冒険』が、朗らかな笑顔と共に……

本日中に『あとがき』を投稿。それをもって、この小説は『完結設定』になります。

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