第千四百話
「……そろそろか」
「ん?」
秀星とレルクスの戦い。
すでに周囲のビルは粉々になって更地と化しており、激戦であることは……もう、語る語らない以前に、どうでもいいことか。
レルクスは小さく呟き、剣を消した。
何らかの収納魔法の中に突っ込んだようだ。
「……何をするつもりだ?」
ここまで、魔力技術を用いた剣術のみで戦っているレルクス。
とはいえ、今の秀星は、黒い外套を身にまとっている。
所有する神器の一つ。『デコヒーレンスの漆黒外套』
デコヒーレンスとは……まあ、専門の方が聞いたらキレるかもしれないが、凄く大雑把に言えば、『情報が保持できない状態』と言える。
その作用があるため、この外套に触れたほとんどの攻撃は、情報を保持できずに霧散することになる。
この外套を軸にして様々な防御魔法を展開しているため、遠距離攻撃はほぼ通らない。
だからこそ、レルクスは剣術を軸としている。
その剣をひっこめたら、次に何をするのかという話だ。
「……ここからは、もうどうしようもない戦いが始まる。君も、何か残している切り札があるのなら、使っておくといい」
「ほー……そりゃ面白いことを言う」
苦笑。
レルクスの提案に対する秀星の反応はそれだった。
秀星は一度、全ての神器を内側にひっこめる。
次の瞬間、全ての神器が秀星の内側から出てくる。
「はぁ……マクロード相手なら、ケテルさえ解放したんだが、さすがに段階を踏んで解放するような悠長なことはしてられんな……セフィラ。全開放」
空中に浮かんだ十の神器が輝きだした。
「十一番目……『知識』のセフィラ、『ダアト』を解放」
神器が全て集まって、一つの剣を作り出す。
「来るんだ。『全知の剣アカシックレコード』」
秀星の手に収まる一本の剣。
完全に純白の剣であり、宝石がところどころに埋め込まれて、幻想的な輝きを放っている。
それを見たレルクスは頷いた。
「よし、いいだろう……来るんだ。『全能剣ゴッド・ノウズ』」
対照的に、レルクスが呼び出したのは、純黒の剣。
お互いに、何も想定せずに出したはずだが、その剣のフォルムは全く同じ。
色だけが、白と黒で反転するというものになっている。
「それが、レルクスの神器か」
「ああ。そうだな。これを握った僕がどれくらい強いかという目安を教えておくと……」
レルクスは剣を構えて、口を開く。
「剣術だけでも、ミーシェに絶対に勝てる程度。と言っておこうか」




