第千三百九十一話
「……なぁ。これ。俺が見に行ったら怒られるかな」
「さあ。私にはわかりません」
秀星は高層ビルでまったりしていた。
これまで、まだ誰一人として倒しておらず、所有スコアが『0』のままだが、特に何も考えていない様子。
その上で、アトムとレルクスの戦いの気配を感じ取って、セフィアに聞いていた。
……まあ、セフィアとしては、秀星がやりたいと思えばそれでいいし、やらないなら別に構わない。
どちらの方が良いのかどうかなど、あまり聞いても答えてくれないし、そもそもこの手の演算なら、セフィアよりも秀星の方が優れている。
視点は違うが、はっきり言ってその程度である。
「……だよなぁ。まだ神器も出してないし、俺が見に行っても問題はないと思うけど、アトムの方が嫌がりそうじゃね?」
「確かに、全知神レルクスが『戦うを見られるのを嫌がる』とは思いませんが、アトム様はわかりませんね」
アトムがタキオングラム以外の神器を持っていることは、初対面からわかっていた。
神器の隠蔽性能が高すぎてその中身は全く分からなかったが、まあ、汎用性を高めるようなものだとは思っていた。
ただ、この距離であっても、その『ゴツさ』は感じ取れるのが秀星であり、今のアトムのビジュアルを想像するのはやりやすい。
神器のコアを作っているのは全てゼツヤであり、作った神器の外見にはある程度の制約がある。
その法則の知識がすべて頭の中にあるので、大体わかるのだ。
アトムもそのあたりの理不尽知識に関しては予想しているだろうが、だからと言ってむやみに手の内を晒したくはないだろう。
バトルロイヤルという戦いの場に適さない意見ではあるが。
「……しかし、アトムがここで使って来るとはなぁ。別に使う必要もないだろ」
「優先順位を考えればそうなりますね」
レルクスに一発当てるという実績は欲しいだろうが、アトムなら、おそらくタキオングラム一本でなんとか行けるはずだ。
汎用性が高い神器の性能を活用する才能も持っているが、レルクス相手に遠距離攻撃はまず当たらない。
それなら剣で勝負した方がまだいい。
アトムもそれは分かっているはずだが……。
「……まあ、意図が見えない以上、ここで何を言っても予想でしかないか。試しに行ってみよう」




