第千三百九十話
流星群、豪雨、落雷、噴火、津波、地震、椿。
地球上で起こる様々な『ヤバいこと』が、アトムを中心として発生している。
「……ん? なんか変な悲鳴が聞こえてきたような……気のせいか?」
「気のせいだ。それよりも、もっと理不尽なことをやってみるといい。この程度では、僕にダメージを入れることは不可能だ」
圧倒的な出力を属性バラバラでぶつけたとしても、レルクスには通用しない。
いや、全能ではないので、無抵抗ならばダメージを入れられるパターンは存在するはずだが、『無傷の未来』が1つでも存在すれば、それをなぞるだけでレルクスは無傷である。
(はぁ。全知ゆえに面倒な矛盾も考える必要があるな……)
『全知』という特性を持つ敵キャラに一発ブチ当てる。という作品は数多く存在する。
ただ、それらの作品の多くは、
『予測できる未来そのものがあやふや』
『情報は完全だが、一々アクセスする必要がある』
という状態のことが多い。
『可能性として確率の高い未来』は見えるのだが、主人公が意表を突いて攻撃をぶち当てるパターン。
『情報そのものは完璧』だが、情報量が大きすぎて頭にはおいておけず、一々アクセスし、『脳内で処理できる情報量』をその都度インストールする必要がある。
とまぁ、そんな状態の『制限』がいろいろあって、それが原因で、全知キャラはボコられるのだ。
で、全知神レルクスがどういう存在なのかと言うと。
『完璧な情報体そのもの』である。
どうしろというのだろう。
……と思わなくもないが、何度も言うように、別に『全能』というわけではない。
言い換えれば、『思ったことが何でもできるわけではない』ということだ。
全知ゆえに、『自分が考えていること』も最初から最後まで全て知っているが、それゆえに、『そこから外れた概念』というものはわからないし、技術的限界は神々にも存在する。
時々『理論上は上限がない』などと言うフレーズを聞くが、確かに神々が使う力は損なモノばっかりだが、なら実際にアホ火力が発揮できるのかと言うと、それは無理ということだ。絶対に同格以上に迷惑をかけるというのが大きな理由ではあるが。
(一番問題なのは、レルクスの私情ですべて決まる部分か)
攻撃を行う際、そこに間合いと言う概念は確実に存在する。
アトムだって射程無限ではない。
そして、その外にいれば、レルクスは絶対に攻撃を食らわない。
(レルクスは、『攻撃を当てられる可能性は0ではない』と言っていたが、要するにそれはいずれ当てられるということだ)
レルクスは『もしも』すら全て知っている。
ただ、あくまでも何が選ばれるのかをしっているのだ。しかも、最初から最後まで。
そんなレルクスが『攻撃を当てられる』と言っているのだから、当てられるのだ。
捨てて良い可能性のことを考慮するような性格にも見えないし。
「はぁ、面倒な……」
唯一、今のレルクスに制限があるとすれば、それは『アトムを逃がさないようにしなければならない』ということ。
理由は不明だが、レルクスにとってそれが重要らしいので、そこは守るだろう。
それを利用してうまくブチ当てるしかない。
……めんどくささの極みのような話だが、『レルクスに一発ブチ当てることができる』となれば、多くの神々の度肝を抜けるだろうし、そうなれば、これからの地球に神々がちょっかいを出してくる可能性も低くなる。
アトムにとっても必要なことなのだ。




