第千三百八十九話
神器は、軽く呼ぼうとするだけで装備出来たり、実際に掌に呼び出したりできるほどの便利機能が備わっている。
それくらい簡単に出てくるわけだが、収納されているときはその隠蔽性能が高い。
神器を持っていると魔力量は多くなるので、それによって『もしかしたら持っている?』と思う程度だろう。
要するに、アトムがどんな神器を持っているのかという点において、『剛速神剣タキオングラム』に関しては、『アトムの素質』という点も相まって天界でも時々話題になるほどだが、他にどんな神器を持っているのかに関しては不明であった。
「……まあ、アレだな。確かに『そうなる』ように組み上げたんだろうけど、だからってここまで影響力が大きくなるもんかね?」
ラターグの『第三層』に匹敵するほどの『周囲の人間に対して影響を与える能力』がある。
しかも、アトムはラターグのように、影響を与えることを目的としているわけではなく、単純に『できることが増えた』だけに過ぎないが、それでも、その存在感が大きすぎるのだ。
「アレが、娘には見せたくない姿……か」
ゼツヤはレルクスとアトムが戦っている場所に到着した。
そこでは、ゴツゴツした厳つい鎧を身にまとっているアトムが、タキオングラムを構えてレルクスと対峙している。
ただ、レルクスにとってはこの展開も分かっていただろう。特に表情を変えるつもりはない。
「……アトム。あんなものを隠し持ってたとはなぁ。マジでそんじょそこらの神祖くらいなら正面から叩き潰せるんじゃないかアレ」
ゼツヤはそう思う。
というか、実際に倒せるだろう。
地球で起こりうることを再現するという神器。
神々は地球で起こることなど、『神になった自分』にとっては下々に過ぎないと考えているものもいるが、そもそも彼らだって名前を与えられただけの人間であり、『神』という、人間が作った最も強い言葉よりも、さらに強い言葉を作れない時点で、その『想像力』は人間レベルだ。
そんな状態で今のアトムと戦ったら、真正面からボコボコにされる。
「……あ、隕石が降っていた。ジャブにしてはやるなぁ」
思ったよりも、『全知神レルクスのスペック』に興味があるようだ。
……まあ、神々にとっては、『みんな興味がある』ので、別に問題はない。
ゼツヤとしても、しっかり見させてもらおう。




