第千三百八十八話
アトムが持つ神器は、『剛速神剣タキオングラム』という『重くて速い斬撃を叩き込める剣』である。
これは一つの事実だが、持っている神器は一つだけとは限らない。
そもそも、何か起こるのかわからないのが『世の中』というもので、多種多様な環境に身を置くことになるアトムが『シンプル』を極めたような神器だけで満足するかとなれば、そういうものではないだろう。
アトムは、三つの神器を持っている。
そしてタキオングラム以外の二つは、セットとして使うにふさわしいと言えるものだ。
「……随分と厳ついね」
「ああ。別にスマートにやることにこだわっているわけではないが、だからと言ってこれを何度も着れるかと言われると、首を縦には振れん」
ゴツゴツした、まるで岩石でも身にまとっているのではないかと思わせる『鎧』を身にまとっているアトム。
鉄を鍛えて固めたものではなく、岩盤をくりぬいて形にしたようなフォルムは、どこまでも無骨さが出ており、『精錬』という言葉からかけ離れたものがある。
ただ、精錬からかけ離れているがゆえに『大自然』を想像させ、それが『存在感』に繋がっているともいえる。
「『地球鎧リソスフェア』……それがこの神器の名前。その効果は、『地球上で起こりうることを、大体再現できる』というものだ。知っていると思うが」
「ああ。そして、それを十分に使うために、同時に別の神器を使っている。それが『惑星核アトム』……そうだな、絶大な力を秘めた『心臓』ともいえるものだが、『鎧型の神器』を同時に使うことで、リミッターを外して使うことが可能なものだ」
地球上で起こりうることを再現するという絶大な汎用性がある鎧と、それを支えるための最大級の『ブースト系』の核。
これ以上ないほどのシナジーを発揮する組み合わせであり、まあ、ある意味で『シンプル』ともいえるのか。
汎用性という言葉とシンプルという言葉はあまり因果関係が近くはないのだが、こうして神器の効果だけで考えると『シンプル』に見えるのだから何とも言えない。
「さてと……攻撃が当てられる未来は、0パーセントではないと言っていたな。それを探りに行くとしよう」




