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神器を十個持って異世界から帰ってきたけど、現代もファンタジーだったので片手間に無双することにした。【連載版】  作者: レルクス
本編最終章 神器を十個持って異世界から帰ってきたけど、現代もファンタジーだったので片手間に無双することにした。編
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第千三百八十六話

「……特別エリアに踏み入れていながら、ここまで『燃え尽き症候群』になっているとは、珍しいこともあるもんだ」

「……ああ、ゼツヤさん」


 特別エリアの中でも隅の方と言える場所。


 黒い建物が並ぶ特別エリアと、他のエリア……草原となっているそれの境目に位置するようなところにある高層ビルの屋上で、栞は黄昏ていた。


 そこに話しかけたのはゼツヤだが、彼としては、戦うつもりはないらしい。


 いや、最初は戦うつもりだったのかもしれないが、栞の様子を見て、戦う気が失せたといった方が正しいか。


「椿相手に全部出し切ったけど、全然かなわなかったわ」

「そうだなぁ。確かに、ミーシェ相手に戦いができるとは思ってなかった。相当ヤバいレベルに踏み込んでるなあれは」


 剣術神祖であるミーシェ相手に、剣で戦える。


 それだけで、常識はずれの実力を持っていることの証明になる。


「素質と言う意味でも、あの子は凄かったし、現時点でも、あそこまでやれるなんてね……」

「敵わなかったからって感傷に浸るのは分からなくもないが、君には未来でやるべきことがたくさんあるんだろ? ごちゃごちゃ考えていても仕方ないと思うが?」

「……確かに、たくさんあるわ。将来は魔法省で働く身として、父さんからたくさんのことを教わってるし」

「なるほど……しかし、君ら親子って公僕に向いてんのかね……まあいいか。ただ、深く考えても仕方ねえだろ」

「確かに」

「……まだ、何か悩む原因があるのか?」

「……素質と言う意味でも、私を超えるような奴が、クラスメイトにいるのよ」

「ほう……」


 椿がセフィアに語ったことが事実であれば、ミーシェの息子がいることは確定だ。


 剣に限って言えば、栞が何度挑んでも勝てない相手。


 それを考えると、確かに『素質』だけで見ても、栞を超えるものはいる。


 神々は、血よりも『名』が重要ではあるが、だからと言って神々の肉体は完全に無関係とはいえない。

 人間レベルの話をするのであれば、神祖の息子であることは圧倒的な意味を持つ。


「……君を超えているのは何人だ?」

「剣術で一人、頭脳で一人。と言ったところかしら。どっちも化け物よ」

「君から見て化け物ねぇ……」

「父さんも、未来の秀星さんも、警戒に値するとして、『生まれた時』から気にかけてたくらい」

「そりゃ凄いな」


 日本のツートップが『警戒に値する』とは。


「確かに私も、特別と呼ばれるほどの素質はある。けど、なんか、『上』がすぐそばにいるせいか、自己評価があげられないのよね」

「……別に上げる必要もないと思うが?」

「それもわかってる」

「重症だなぁ……」


 自分を認めるための土台ができていないといったところか。


「……まあ別に、認められないなら認められないで、努力できる理由になるからいいんじゃね? 自分に満足できないって言うのは、ある意味じゃ才能だぞ」

「……そうね」


 表情はあまり変わらない。


 言い方はあれだが、『ツバキくらいには勝っておきたかった』のだろうか。


「言葉だけじゃどうにもならんな。まっ、考えたって解決しないこともあるし、いいか。今アトムがレルクスと戦ってるけど、どうする? 見に行くか?」

「……未来の父さんから、見ないでほしいと言われてるから、遠慮するわ」

「そうかい……」


 一体どういうことなのだろうか。


 ゼツヤはすごく気になる。


「……まあ、俺は行ってくるよ。あまり思いつめないようにな」

「わかってるわ」


 ……あまり表情は優れない。


(……あ、そうだ。そもそも、今の栞ってドッペルゲンガーで、もうそろそろ存在を保てなくなるって話だったな。そりゃ感傷にも浸りたくなるわ。なんでわからなかったんだろ)


 ゼツヤは何となく罪悪感を感じながらも、レルクスとアトムの様子を見に行った。

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