第千三百六十二話
栞は剣を天に掲げる。そこに炎が出現。
だらりと下がった左手からは膨大な水が出現して、地面を海で沈めていく。
それを見たセフィアはジャンプして近くのビルの上に避難した。
ちょうど、アトムの真横に来るような形になる。
「……さて、一体何が……おや?」
海を使って攻撃するというセフィアの予想は、どうやら外れたようだ。
「浮上せよ……『大灯台大軍艦』」
海の底から、巨大な何かが上がってくる。
それは確かに、巨大な砲塔が存在する戦うための船。
ゆっくりと下から上がってきて、甲板の中央部に存在する塔の最上部に、火が灯った。
アトムとセフィアの目算では全長400メートルはある巨大な船で、そんな巨大な形態でありながらも、その砲塔は存在感を主張するほど大きい。
「……何だあれは……」
「巨大な船……主砲もかなりのものですが、副装備も充実していますね。ガトリング砲がいくつも設置されています」
「いや、そこではなく、何故船に灯台があるのかという話だ」
「ああ。そこですか」
そもそも参加者の中に創造神がいるような環境だ。
アトムとしては、別に海を生み出して、そこから巨大な船が出てこようと別にどうこう言うものでもない。
ただ、その内容に関しては思うところはある。
灯台というのは、湾岸などに建設され、船がその位置を把握するために存在する。
遠くを照らす灯台は、特に夜に海を移動する船にとって重要なものなのだ。
しかし、栞が出現させた船には灯台が存在し、それそのものは存在目的に反するもの。
ただ、この船の名前が『大灯台大軍艦』であることを考えると、船の要素と共に、灯台があるということも重要のようだ。
「あの海にはまだ様々なものがあって、あの船があることによって呼び出せるとか?」
「いや、セフィアも分かっていると思うが、あの海の中にはもう何もない」
「確かに、何も見えませんね」
「あの海は、あの船を保管しておくために存在するもの。となれば、『先導』が目的ではないというわけか……」
外野がうだうだ言っている間に、主砲が椿に向けられる。
「にゅ~……ふああ~……まだ眠いです~……」
「……っ!」
まだまだ眠そうな様子の椿。
そんな椿に対して、栞は怒りも何もない。完全集中し、その呟きを『隙』と捉えた。
主砲から巨大な砲弾が放たれて、まっすぐに椿に向かう。
「にゅ?」
椿は、手刀を真横に一閃。
それだけで、砲弾は塵となって消えた。
「……やっぱり、主砲をぶっ放すだけだと足りないわね。全力で行くわ」




