第百三十五話
エインズワース王国。という国について調べてみた。
位置としてはヨーロッパに位置しているが、EU非加盟国である。
島国であり、船や飛行機と使わないとそもそも入れないそうだ。海の上を走れる秀星には関係のない話である。
秘密主義な部分が多いようで、生活水準にしても治安にしてもいいようだが、セフィアに聞いたところ、世界にいくつか存在する『魔法社会国家』とのこと。
島国で、なおかつ情報規制を行いやすい人数で収まっている国では、ライフラインをはじめとした重要な部分を魔法具にすることで社会を形成しているようだ。
外部から来た人間がたまに不思議に思うかもしれないが、所詮その程度に収まるようにしている。
まあ、あまり興味も面白みもない国が多いので外部の人間が来ることもほとんどないのだが。
そんな感じで、開発された魔法具や、磨いてきた魔法を使って生活している。
魔法というものと深くかかわっているのだ。
「そういう事情もあり、王位継承権に関しては、基本的に魔法がすぐれているものからはいるようになっているのですが、私がいない間に、どうやら別の派閥ができているようなのです」
王女専用なのかは知らないが、VIPな感じのジェット機に乗りこんだ秀星とアレシア。
今回、行くのは二人だけである。
雫が来たがっていたのだが、今回は問題が大きく、ほとんどのものは対応することが難しいようだ。
というより、かなり繊細なことになっているので、空気を思いっきりシェイクする可能性がある雫を連れていくのは愚策である。
他にも来たがっているものはいたが、アレシアが怪しい笑みを浮かべると逃げた。
「別の派閥?」
「はい。魔法社会において陰で生きてきたもの達……『超能力派』です」
「すっごくややこしいことになりそうなものが出てきたな」
「ついでに言いますと私はその派閥に属しています」
「確信犯かよ」
派閥が出来たとか言っておきながら自分が入っていたとは……。
「で、何が目的なんだ?」
「その前に、秀星さんは、超能力と言うものはどういうものだと思っていますか?」
「どうって……『頭が痛くなるアレ』程度にしか思っていないぞ」
秀星の返答にアレシアは頬を動かしたが、すぐに戻した。
超能力というのは、あくまでも秀星が使う分野における物を言えば、発動プロセスが異なる魔法のようなものである。
構築式と魔力がそろっていれば魔法は発動する。とどこかで説明したが、超能力の場合もそこまでたいした差はない。
同じく魔力と言うものを使っているからだ。
魔力と言う言い方なので魔法にしか使えないように感じるだけで、そのようなことは一切ない。
「超能力の方が、よほど才能に恵まれていないと使えないっていうのはあるけどな」
「そうなのですか?私も初めて聞きました」
秀星は思わず真顔になった。
才能がないと使えない。というのは簡単な言い方だ。
厳密には、脳における意識的な部分と無意識な部分の使用割合の話である。
魔法の場合は意識領域の比率が高く、超能力の場合は無意識領域の比率が高い。
無意識な部分を要求する比率の高い超能力を使う場合、脳の構造に委ねられるのだ。
才能がないと使えない。と言ったのはそう言うことである。
アレシアは話を戻すことにしたようだ。
「超能力派閥と言うのは、本来、表に出るつもりはなかったのですが、魔法派閥の悪い部分が多く見えてきたので、父上がいなくなった後でどうなるのかが不安になったのでしょうね。積極的に活動することが決まって、私も国に戻るように言われました」
「……」
どんな組織にも悪い部分はある。
というより、組織と言うのは人が動かすものなのだから、悪い部分がないと動けないのだ。
アレシアが目指しているゴールはまだ分からないが、秀星から言えるのは一つ。
「俺を呼ぶって言う時点で、結果的に勝てても、何かに負けているようなものだと思うけどな」
それを聞いたアレシアの表情は変わらない。
だが……アレシアも、それが分かっていないわけではないようだった。




