第千三百四十二話
「……容赦のない性格になったもんだなぁ」
風香が特別エリアで放った技は、秀星も認識していた。
圧倒的な出力でエリア全域に影響を与える攻撃など、出来たとしても使うかどうかとなれば話は別とする者は多いだろう。
だが、現実として技は放たれて、エリアから聞こえてきた戦闘音は鳴りやんだ。
頭のネジを緩めれば圧倒的な出力を発揮するような連中はこのバトルロイヤルの参加者には多いのだが、その最初が風香になるというのは予想外である。
「セフィアはどう思う?」
「秀星様についていくというのであれば、それくらいのズレは必要かと」
「俺がいろいろズレてるような言い方だなぁ」
「人間の中で世界一位の実力を持つ者がズレていないわけがありません」
「まあ、それも確かに」
自分の都市エリアに新しく作った高層ビル。
その最上階フロアに作ったリビングで、秀星はセフィアが用意した紅茶などを飲みながら寛いでいた。
本当にゆったりまったりした様子で、彼もまた、高志や来夏と同様、積極性はない。
「なんていうか、本当に面倒な連中がいない場所に、面倒な奴を突っ込んだような感じになったな」
「そうですね。風香様の戦闘力はかなり高いので、環境を変えるのには十分です」
「で、そのそばでは椿が応援してるから、風香も止まらないってわけか。最強だな」
神々はまだ、戦場に立っていない。
魔力の法則とは『別枠』である高志や来夏も、戦場にいない。
秀星もいない。
この環境なら、風香が一番強いだろう。
「……しかし、アトム様よりも風香様の方が強いとは、少々予想以上でした」
「そうか?」
「ええ、才能の塊という意味では、アトム様の方が断然上でしょう。それを考えると、風香様の方が勝てないのでは?」
「言いたいことは分かるが……まあ、これに関しては神祖の神器込みの話だ。いくらアトムでも、その才能は神には至らんよ。最高神の神器を持っていても、実力の限界値は神祖の神器を持ってる風香の方が上だ」
「なるほど」
純粋な素質で言えば、風香はアトムには遠く及ばない。
それは事実だ。
ただ、未来の風香が持ってきた神祖の神器込みの実力なら、アトムを圧倒することも不可能ではない。
「とはいっても……最高神の神器込みのアトムだって、相当だからな……」
「互角の勝負になると?」
「さあ、それはぶつかってみないと分からんよ」
フフッと微笑む秀星は楽しそうである。




