第千三百三十三話
「あーもう! まさかミーシェが近くのエリアにいたとはなぁ。クソッ、最大の誤算だよ全く」
ラターグは枕を抱えて、見渡す限りの布団エリアを歩いていく。
その顔は、正真正銘『計画が狂った』と言わんばかりのものだった。
スマホを取り出して、マップを立ち上げながらつぶやく。
「大体十六人のエリアが、等間隔に時計回りに配置されてるね。マップの中央には特に頑丈に作られたエリアがある……うーん。どこにお邪魔するのが一番楽かなぁ……」
ゴロゴロ寝ていられるのなら、寝るに越したことはない。
それがラターグの持論である。
「ミーシェは僕と椿ちゃんのエリアに挟まれてるし、基本的にボーっとしてると思ってたんだけどなぁ。ていうかなんでアトム君やられてるの?」
ポイントの変動を見れば、ミーシェがアトムを倒したことは明白だ。
しかし、アトムのエリアはミーシェの真反対なので、行くのは面倒だろう。
あるいはカモとして狙ったのか……。
「はぁ。ダラダラしていても怒られない安息の地に行きたい」
だったらバトルロイヤルなんて参加しなけりゃよかったじゃん。
……というツッコミはしないでおいてあげるとして、唸りながら考えている様子のラターグ。
「……ていうか、僕ってそもそもミーシェに何もしてないよね? なんで斬られたの?」
バトルロイヤル中だから……ではないだろうか。
「……くそぅ。思ったよりも過ごしにくい環境だったんだなぁ。バトルロイヤルってなんか秀星君たちはのんびりやってたと思うんだけどなぁ」
それは秀星がボスキャラ扱いで普段暇だっただけだ。
「世の中甘くないね。とりあえず、安眠できる場所を探そうか」
懲りない様子だが、これで懲りていたら堕落神など名乗っていない。
「とりあえずいろいろ回ってみようかな。いろんなエリアがどんな感じになっているのか知りたいし。さすがに布団でエリアが覆いつくされてるのは僕くらいでしょ」
オーストラリア大陸レベルで布団で埋め尽くされていても気にならないのがラターグクオリティ。
とはいえ、他は流石にそうではないだろうということで、別のエリアに向かうのだった。
……本当に、マジで、バトルロイヤルというものを理解していないのではないだろうか。なんかそんな気がする。




