第千三百三十二話
「……師匠。自由にやってるな」
自分のスマホに入れたアプリを使うことで、ポイントの変動履歴を確認できる。
誰が誰を倒したのかということはその変動を見れば一目瞭然。ミーシェが+4ポイント。ラターグとアトムが-1ポイントとなっており、ミーシェが何らかの方法で切り飛ばしたのだということはわかった。
剣を握ったミーシェにとって間合いなどあってないようなもの。
それを考えれば、開幕早々、自由なことになっているのは分かりやすい話だ。
「まだ準備期間っていうこともあるとは思うんだが……まあ、開幕からどこかに攻めるくらいしかすることがないやつも多いか」
単純なバトルロイヤル形式であり、今のところ、何かしらの重要なアイテムがフィールドに配置されているということもなさそうである。
加えて、武器やアイテムは持ち込みに制限が特になかった。
要するに、全員が『準備と呼べるものはあらかじめ済ませている』ということである。
そもそも準備という概念すらなさそうなやつもいるし。高志とか。
だが、攻撃というものは環境によってその都度調整が求められる。これはミーシェだって同じだ。
そのため、周囲の『把握』は重要である。
その『把握』が、今回のバトルロイヤルにおける『初期』に済ませることであり、秀星が言う『準備期間』という言葉の中身だ。
とはいえ、その把握が速すぎる存在もいる。
ミーシェやアトムは、この中では高い方だろう。
「ただ、ラターグが自分からどこかに開幕から攻めるとは思えんな。きっと自分の初期エリアにいて、師匠から近かったから狙われただけっぽい……これ、ラターグはまともに寝られんな。師匠のカモにされかねん」
ラターグは常日頃からダラダラゴロゴロしたい。
もちろん、バトルロイヤル中だってそれは変わらない。
というわけで、開幕から寝具を用意してスヤスヤと寝ていたら、近くにいたミーシェに抱き枕ごとぶった斬られて、障壁が破壊されてリスポーンと言ったところ。
……これではさすがのラターグも寝られない。ラターグだって斬られながら寝たくはないし。
「……となると、ラターグが最初からそれ相応に動くしかないか。あるいは、師匠を遠ざけるために何らかの策を出すか……面倒なことになりそうだな」
ラターグもかなりの実力者だが、それでも、剣を握っているミーシェをそう簡単には相手にしたくないはず。
となれば、直接戦闘以外の方法で安眠できる場所を確保するはずだ。
ミーシェは結構単純なので、ちょっとした策でころころ移動するだろう。
そしてそれは、バトルロイヤルの環境変化に直結する。
「俺もそろそろ構えておくか」




