第千三百二十三話
「むうう……野球って、何が起こるかわからないスポーツですね!」
試合終了後。椿はそういう結論に達したようだ。
スポーツというよりは人間の方に問題があるというのが真実というものだが、椿がかかわった野球が変なことになるのは間違いないので、椿視点で考えると議論しても仕方のないことか。
「まあ、何が起こるのかわからないって言うのは事実だぜ」
……意味が違うように聞こえるのは気のせいではあるまい。
「それにしても……なんで魔法省の敷地にこんな本格的なグラウンドがあるんですか?」
今更?
「まあ、何でもいいんじゃね? 魔法省としての予算じゃなくて、憂さ晴らしでダンジョンに潜って稼いだ金で作ってるみたいだしな。たまにはグラウンドを作りたくなる時もあるんだろ」
……まあ、魔法省という日本の国家予算で運営されている機関ではあるが、確かにそういう経緯で稼いだ金を使っているのなら、使い道は自由である。
そもそもなぜ憂さ晴らしをしなければならないほど……それもグラウンドを建設できるレベルで暴れまわっていたのかに関しては、どこぞの魔法次官が大きく関係していると思うが、さすがに現場の人間がグチグチ言った程度で同情を誘えるような人間ではないので議論は置いておこう。
ただ、『たまにはグラウンドを作りたくもなる』というのは『んなわけあるか』となるに違いない。
ホームページにグラウンドの写真があったら『?』となるし、実際に役員になって『おい○○、野球やろうぜ!』となったら『帰っていい?』としか言い返しようがない。
「むうう……そんなものですね!」
ただ、最初から最後までほぼ気まぐれで動いているのが椿である。
で、気まぐれであるということは、椿自身、グラウンドみたいなものを欲しいと考えたことがあるということだ。
朝森宅の地下にグラウンドがあっても不思議ではない。ということでもある。そういう意味では、未来の朝森宅の『地下』っていったい何がどうなっているのか非常に意味不明なことになっている可能性があるが……まあ、気にしても仕方ないか。
「次はどこに行きましょうか……むー、創造神ゼツヤさんが最近、地上に工房の支部を作ったみたいなので、行ってみましょう!」
気まぐれもここまでくると個性である。
いや、知ってたことだし、椿って個性の塊のような人間だから、まあ、ね?




