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第百三十二話

 アトムが率いる『ドリーミィ・フロント』において生産職担当である糸瀬竜一を呼んで、秀星の自宅地下に急遽作った巨大整備施設で作業に取り掛かっていた。


「えーと、設計図はこれだ」


 秀星は竜一にレシピブックのページを見せる。

 どう考えても本一冊で足りるようには思えないが、レシピブックは必要事項を常に表示してくれる本なので、ページをめくって探すということはないし、必要であればその都度編集されるものである。


「なるほどなるほど、特撮に出てきそうなロボットを作るわけか」

「そういうことだ。だから、本当にロボットみたいにするんじゃなくて、こんな感じに小分けにして……」


 竜一としても秀星が持つレシピブックには興味があるのか、それとも作ろうとしているロボットにテンションが上がっているのか、いずれにせよ悪乗り同盟という名に恥じない思考回路をしているのでノリノリである。


「ふむ、ある程度の完成案をすでに聞いているが、なかなか面白いものになりそうだね」

「材料がとても多く見えるんですけどね。いったい何台作るつもりなのでしょうか……」

「あら、面白いほうがいいじゃない。私もある程度どんなものを作るのか聞いているけど、私もいくつかほしいわ」


 アトム、道也、刹那の三人も見に来ている。

 竜一を借りる際に見に行きたいということで来てもらっているのだ。


「剛毅さん。あれ乗りたいんすか?」


 相変わらずの青髪リーゼントである青芝誠也がリーダーである剛毅に聞いている。


「だってよお……面白そうじゃねえか」

「まあたぶん乗れると思うけど。テストプレイで」


 剛毅がうずうずしているところで、横から茶柱矢糸が不吉なことを言った。

 獣王の洞穴。

 剛毅をリーダーとする少数精鋭のチームだ。


「え、テストプレイっすか?」

「秀星がいろいろ持っているのは知っているが、こういった巨大ロボットを作るなんて話を聞いたことがないし、作ってたら来夏が黙ってないだろ。どんな事故が起こるかわからんからな。ギャグ補正が高い俺たちなら、全身が複雑骨折するくらいなら問題ないし」

「いや、さすがにそこまで行くと全治するのに一週間はかかるぜ?」


 その時点でいろいろおかしいことに気が付かない剛毅。


「なんかそういっている間にも着々と進んでいるね」

「何をしているのか早いうえに専門的すぎてよくわからないけど」

「最終的には剣の精鋭のメンバーが乗り込むんでしょうね。いったいどうなることやら」


 アトムはうなずき、刹那は首をかしげて、道也は溜息を吐いた。


 ――三十分後。


「よし、テストプレイも済んだ。剣の精鋭を呼ぶぞ!」


 瀕死状態になっている獣王の洞穴の三人をあえて見ないようにして、秀星はそう宣言した。

 もちろん、ほかのメンバーからはごみを見るような目で見られるが、その程度では気にしない。


 ★


「すっごおおおおおい!」


 秀星の自宅地下に入ってきた剣の精鋭メンバー。

 雫は叫んだ。


「面白そうじゃねえか。動物の形をしたものが多いんだが……」

「合体ロボのようなものでしょうね。秀星さんのことですし、そのくらいならやりそうです」


 来夏が首をかしげているが、なんとなく事情を察したアレシアがフォローする。


「なんか……意味わかんないわね」

「あ、トラのロボットがあるです。美咲はあれに乗るです!」

「ふにゃぁ……」


 あきれる優奈。はしゃぐ美咲。げんなりするポチ。


「ただ、最近出てきているロボットを倒すために作ったとすれば、明らかにオーバースペックだと思うのだが……」

「羽計ちゃん。秀星君がかかわっているんだから大体そうなるものなんだよ」


 いろいろと思考が飛んで技術の無駄遣いを感じた羽計だが、風香の助言で、理解したというより察した。


「いったい何をどうすればこんな物作れるのよ……」

「なんというか……masterpieceです」


 技術者ゆえに、レベルの高さを感じてしまう千春とエイミー。


「で、いろいろあるけど、だれがどれに乗るんだ?」

「それならもう実は決めている」


 秀星は表を出した。

 そこにはこう書かれている。


 秀星   ゴッド

 来夏   ゴリラ

 アレシア 馬

 羽計   鷹

 優奈   猿

 美咲   トラ

 風香   フェアリー

 千春   イヌ

 雫    ナマケモノ

 エイミー サメ


「……これ、どういう感じに決まったんだ?」

「ロボットを作る上での仕様上の問題だな」

「いくつか動物じゃないね。私のフェアリーとか、秀星君のゴッドとか」

「ロボットを作る上での仕様上の問題だな」

「なんで私はナマケモノなの!?」

「ロボットを作る上での仕様上の問題だな」


 この時点で、剣の精鋭は全員が察した。

 要するに……真相を明らかにする気が全くない。ということである。


「まあいいや。次にロボットの敵が来たときは、こいつらを使ってスクラップにしてやろうぜ!」


 来夏はどうでもよくなったのか、そういって会話を強制終了させた。


「ところで、なんで剛毅たちが瀕死なんだ?」

「ロボットを作る上での仕様上の問題だな」

「アトムたちは乗らないのか?」

「実戦で乗った場合、けがをしそうだからね。それに、ロボットに乗らずとも、生身でもあの程度のロボットなら倒せるから」


 それは禁句である。

 この時点で、剣の精鋭のメンバーはいろいろ察したのだった。

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