第千三百十八話
「むっはー! ひゃっふー!」
「……」
女子大生をハグハグして満足した後に行く場所はどこですか?
公務員がたくさんいるところです!
……といった、なんだかよくわからない理論の元、椿は魔法省に突撃していた。
とりあえずアトムの部屋に突撃しておけ。という感じなのか、執務室に突撃した様子である。
「……何をしに来たんだ?」
「む? むー……ぷっぷっぱー!」
わかるか!
……まあ要するに、椿本人の語彙力ではどうしようもないような感じになっているというべきか。
いずれにせよ、興奮しているのとほぼ変わらないのは事実である。
そして、興奮している椿をどうにかするという手段は、さすがに誰も開発できていないので、基本放置の構えで過ぎ去るのを待つしかない。
(……まあ、問題なのは、こういう状態になっている椿を職員が完全に受け入れているということか)
要するに何の躊躇もなく、どこにでも入ってくるのだ。
もちろん、本当にやばい部分というか、椿はそういう部分を直観の影響で踏んだり触れたりしないので、大きな問題に発展することはまずない。
……ただ、アトムのような計画が多い人間としては、椿のような予想という概念が通用しないような人間はあまり側にいてほしくはないというのも一つの事実ではある。
叶わない願いか。
さすがのアトムも、理解や理性を超えた『朝森椿』という少女を拒んで発生する『魔法省内におけるデメリット』が分からないわけではない。
椿の侵入を禁止する何かをやった瞬間、女性職員が一丸となってアトムを非難し始めるだろう。
しかも、理解や理性を超えている状態のため、何を言っても聞かない。
正直、そういう状況では会話のキャッチボールは成立しないので、もう、天に任せるしかないのだ。
「……はぁ、何をしに来たのかは知らないが、好きにするといい」
「わっほーい! ハグハグするですうううっ!」
そういって椿は部屋を飛び出していった。




