第千三百十一話
坂神島の闘技場で散々暴れまわった秀星とマクロードだったが、闘技場の修復をして、面倒な処理を色々終えて(主にマクロードの不法侵入に関係)、坂神島を後にすることとなった。
坂神島の住民としては、他の面子はどうでもいいから、椿ちゃんに触れたいという者も多かったのだが、さすがにそれが通ってしまうと大変面倒なことになってしまう。
結局、ぱっぱとやること済ませてぱっぱと帰りました。
……そもそも、坂神島に来たのはマクロードと戦うため。という部分もあるので、そういう判断になるのは仕方がない。
別に坂神島に興味があったのではなく、坂神島でしか戦えないから向かったわけなので。
というわけで、次の便で坂神島を後にして、帰ってきたわけだ。
「招待状ですうううっ!」
バトルロイヤルの招待状を手に嬉しそうな様子の椿。
まあ、イベントに参加できるというだけでかなり喜ぶ子なので、『どの程度』なのかはちょっとわかりにくいが……いや、大した話ではないか。
ポストに入っていたバトルロイヤルの招待状。
封筒の中を見て、内容を理解した椿が嬉しそうにしているわけだ。
「……ねえ、秀星君」
「どうした?」
「秀星君とマクロードさんって、坂神島でしか戦えないんだよね。これって大丈夫なの?」
いろいろツッコミどころがある参加者リストになっているのだが、風香がまず気になったのはそこらしい。
「……まあ、誰が主催者なのかは知らないけど、ここに書かれてる面子を全員接触しようって考えてるのなら、相当な奴だろ。そのあたりは多分何とかしてくるんじゃないか?」
「そ、そっか……坂神島に行った意味。あるのかな」
「多分あるだろ。知らんけど」
「雑……」
呆れる風香だが、まあ、世の中大体そんなもんだ。
秀星だって、基本的には三手先や四手先を考えているが、大体一手先は考えてないので、行き当たりばったりということも多いわけで。
ただ、ここまでの面子を集めるとなれば、それ相応の準備をしてくるだろう。
明らかに出力がおかしいことになるメンバーがほとんどなので、そんじょそこらの設定ではたやすくぶち抜いて終わりだ。
「はぁ……まあ、それはそれとしても、凄いメンバーだよね」
「ああ。神器持ちや神々ばっかりだ。ていうか……基樹の名字って『理想塚』っていうんだな」
「あ。確かにそれはちょっと驚いた。私、基樹君の名字ってなんだか認識したことがない気がするんだよね」
グリモアの元魔王……いや、今は魔王としての本質を取り戻したので『元』をつける必要はないが、それはそれとして、基樹の名字はなかなかの字面をしていた。
誰も気にしなかった理由だが……というか、誰も興味がなかったというのがもっともらしい理由ではなかろうか。
(そういや、マクロードの息子だっけ)
基樹の名前は異世界とは異なるが、おそらくはグリモアにいた時は名字がシャングリラだったのだろう。
ただ、転生後の名字が『理想塚』とは……いろんな意味でツッコミどころのあるものに仕上がったものだ。
「それに何より……この人、本当に来ちゃうのかな」
一番下。
そこにヤバい名前が書かれている。
全知神レルクス。
こいつと戦った経験というものは秀星にはない。
マジで、何が起こるのか想定できない。
「……さあ。来るとは思うよ?ただ、何が起こるかはわからん」




