表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1309/1408

第千三百九話

「闘技場が壊れそうだな……」


 幽月は観客席で呟く。


 まあ、彼の発現の原因ははっきりしており、単純に、『朝森秀星という男の次元にマクロードが合わせた』ためだ。


 神々が相手の場合、そもそもスペックの問題で勝てないため、秀星としては出力的な意味で全力を出す意味がない。


 ありとあらゆる攻撃や防御において、『安定』という言葉を重要視する二人だが、魔力的な視点で見た時に最も安定しているのは、『神力』であり、神々はこの神力だけで構成されている。


 だが、秀星VSマクロードという構図だと、神力というのは、魂のエネルギーよりも操るのが困難な代物であり、戦術的には除外されるのだ。


 そのため、純粋に、『二人の間で出力が高い方』が勝つ。


 しかも、『真理』というルールに対して、『宇宙』というルールを持ってきたことで、『強さの次元』がほぼ同じになった。


 これによって……『全力の秀星に等しい威力を、マクロードも出せるようになる』ということ。


 世界一位の男の全力などまだ発揮されたことがなく、なんだかヤバいことになってきているのだ。


「……ふむ、いっそのこと、闘技場だけを島から切り離すか?」


 闘技場は坂神島の最南端に作られている。


 一応、切り離して移動させることも可能だが……。


「その必要はなさそうだよ」

「ん?……ああ、お前か」

「ははっ、秀星君でも、急に僕を見かけたら驚くのにねぇ」

「全知神が来たら話は違うが、堕落神くらいならそうでもない」

「さいですか」


 上下黒ジャージといういつもの格好で、レジ袋を手に、ラターグは幽月の隣に座る。


 だらしない印象でジャージ姿のラターグと、きっちりスーツを着ている幽月が並んで座っているとなんだかシュールなものがあるが、周囲に人は少ないので別に構わないだろう。


「……で、避難する必要がないというのは?このままだと闘技場が壊れそうだが」

「まあ、いざとなれば僕がなんとかするし……というか、『そういうこと』をさせる場合、『この程度』なら、君の部下の……布明(ふあき)君だっけ?彼に任せればいいんじゃない?」

「全力を出せばという前提付きだが、まあそうだろうな。今頃頭を抱えているだろう。ただ……アンタに似てめんどくさがり屋になったからな……」

「そこはスマン……」


 ラターグが謝っているところを見ると、どうやら『波長』とでも呼ぶべきものが合致してしまった可能性がある。


 それが影響して、今も未来も楽をしてダラダラしたい。という欲求が布明に根付いている。


 ……といったところか。いずれにせよ、幽月にとって迷惑な話であることに変わりはない。


「しかし、朝森秀星……あそこまで強くなっているとはな。ホーラスから聞いた話と全然違うんだが……」

「ん?ホーラス?……ああ、君の教え子か」

「秀星の神器運用と闘魂戦術の師匠ともいえるか。聞いていた話と全然違うな」

「ほー……彼でも、秀星の成長力は測り切れなかったってことかな?」

「さあ?まあ、面倒なことが好きな奴だからな。あえて私に詳しくは言わなかっただけという可能性の方が高いが」

「僕の周りにも多いや。そういうやつ……」


 ラターグは溜息をつく。


「……で、幽月君。彼らの戦いを見ていてどう思う?」

「どういう視点の話だ?」

「そうだねぇ……若いころとか、思い出したりしない?」

「残念ながら、私は昔から頼られる側で、ライバルもいなかったからな」

「なるほど、確かにそれは残念だ」


 苦笑しつつ持ってきたお菓子を食べ始めるラターグ。


「……ラターグにはいたのか?対等に戦える相手」

「うーん……昔は、あー。そうだね」


 ラターグは微笑む。


「若いころ……か。思い出すとしたら『彼』か。まだ神じゃなかったころだけどね。フフッ……ズート君。元気かなぁ」


 彼が神になって、何億年だろう。


 それほど昔のことだが、それでも、覚えている存在が、ラターグの中に入るらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ