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第千三百五話

 秀星の剣が振り下ろされれば、マクロードはそれを捌く。


 マクロードが斬撃を飛ばせば、秀星は黄金の拳銃から弾丸を放つ。


 秀星が魔法で炎の地獄を作れば、マクロードは剣風だけで炎をかきけす。


 マクロードが剣を振って津波を発生させると、秀星は保存箱から何かの石を取り出し、水に接触させて水を消滅させる。


 ……洗練された戦いというより、なんだか前衛アートを見せられているような、意味不明という雰囲気が漂うものになっている。


 剣を振る、銃を撃つ、キューブを出現させ、箱から石を取り出す。

 それらの行動は非常にわかりやすいものだが、そこから発生している概念が非常に意味不明であり、理解ができない。


 ……いや、そもそも秀星とマクロードは、戦える場所がこの闘技場しかないからここで戦っているだけであり、観客に理解を求めているわけではない。


 意味不明だと熱狂できないゆえに静まり返っているが、二人はそんなこと気にしない。


「チッ。面倒な剣術を開発してるな」

「ハハハッ!忘れたのかい?私は『剣術神祖』の最初の弟子(・・・・・)だよ?二番目に弟子になった君とは違うさ。それに……君は、『あの人』の影響で、神器を活用することばかり考えていたはず。クククッ、ユイカミの思考実験だけじゃあ全然足りないぞ!」

「うるせえ!」


 本人にしかわからないであろう情報がマクロードの口から出てきて、それに対して秀星は悪態をついているが、そう、難しい内容ではない。


 秀星は剣術神祖ミーシェを師匠としているが、それよりも前に『師匠』を呼べる存在がいて、その人物からいろいろ学んだ結果、神器の力を軸に戦う方法を数多く開発した。


 その後、ミーシェからも鍛えられることになったが、その時点で、既にマクロードがミーシェから様々なことを学んでいた。


 『ある男』から神器について学び、その後、ミーシェから剣を教わった。


 それが秀星の成長ルーツなわけだが、『ある男』に関する記憶を『器』であるユイカミに抜かれていた以上、地球で動いていた朝森秀星はミーシェから教わった剣を軸に戦うことになる。


 その間は、ユイカミの神器に関する成長に関しては全て思考実験で終わってしまい、頭の中で『検証』は済んでいるが、まだ納得できるレベルに落とし込めていない。といったもの。


「うるさいと言われてもねぇ……フフッ」


 微笑むマクロードの方だが、以前は沙耶からのダブル弁慶で悶絶したり、清磨から受け取った『最高値移行(マキシマムシフト)』のキューブの解析難易度に悶絶したり、全身筋肉痛で悶絶したりと、なんだか報われない日々を過ごしてきた半面、ここできっちり仕上げてきたようだ。


「なんか悪意を感じないかい?」

「俺も変な電波受信した気がするわ……」


 勘の鋭い二人だが、攻撃の手は止まらない。


 次々と攻撃を繰り出して、お互いを観察していく。


 理解不能な攻撃の数々は続く。


 どちらが強いのかなどまるでわからない戦い。


 勝敗の答えは……切り札の数と質。それによるとしか、まだお互いに言えないだろう。

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