第千二百八十八話
「んんっ!……よく寝たですううううっ!」
うるせぇ。
栞は椿の大声で目が覚めて、デジタル時計を見ると、『6:78』と表示されていた。
「……!?」
一瞬で脳が覚醒し、もう一度見る。
そこには『7:18』と表示されている。
(……何?今の)
知らん。
「……?」
栞が上を見ると、なんだかこう……『0』っぽい何かがフヨフヨ浮いている。
時計に向かってフラ~っと進んでいき、がっちゃんっ!と入り込んだ。
すると、『7:18』が『07:18』になった!
「自由過ぎるわっ!」
「え、栞、どうしたんですか?」
「……椿には関係のないことよ」
確かに椿には関係のないことだ。
……いや、本当だろうか。ちょっと怪しくなってきた気がする。
朝っぱらからどこかわけのわからない感じになっていたが、脳が完璧に覚醒したのは確かである。
「……はぁ」
結局、溜息をついてヤケクソ感を洗い流すことにした様子の栞。
前途多難である。
で、チラッと高志を見る。
普段はバキバキの特攻服を着ている頭のおかしい男だが、今は上下ともに白いジャージであった。
……竜に関連するエンブレムがありすぎて、『それどこのメーカー?』と思わずツッコミを入れたくなるようなものに仕上がっているが、まあこのあたりは高志のセンスだろう。なら常人には理解不可能だ。諦めよう。
「ふああ……椿は朝から元気だなぁ」
特攻服の袖を直しながら、高志は起き上がる。
「……」
ジャージはどこに消えた。みなまで聞いてやるから説明してみろ。
「うー!……う?」
沙耶ちゃんが起きた。
……刹那に抱き着いているが、どうやら刹那は椿専用の抱き枕ポジションから、沙耶にも適用されるようになったのかもしれない。
「~♪」
寝ているときもポニテマフラーの刹那だが、やさしく沙耶を抱きしめて寝ていたようだ。
「うー」
刹那の胸に頭を埋めて……いや、埋められるほど刹那の胸は大きくないのだが……いや、言いたいことを言うと、何かが不満そうな沙耶。
Gはある来夏と比較しているのだろうか。刹那に対して求めるのは止めた方が良い。
「むうう……みんな起きるですうううっ!」
キッチンに置かれていたフライパンとお玉を手に取って、それぞれの底をガシャンガシャンと叩いて鳴らす椿。
「……椿ちゃん。うるさい」
爆発寝癖になっている風香が呟く。
(毎度思うけど、何がどうなるとあそこまで寝癖が……髪はしっかり乾かしているはずなのに)
椿の母親だぞ。納得しろ。栞。
……というわけで(何がというわけなのかマジで本当にわからないが)、起きました。
単に朝をむかえるというだけで何かが渋滞している気がするのは流石と言えよう。ただ、ツッコミ役が弱いとどうしようもないので頑張ってほしい。




