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第千二百七十九話

「あ、栞!刹那!こっちですよっ!」


 高層ホテルの最上階のVIPフロアの窓を開けて、下を覗く椿。


 その視線の先には、栞と刹那と布明が歩いてきたところだった。


「……なんだろう、あんまりよく見えてはないんだけど、あそこに椿ちゃんがいるんだろうなって言うのはよくわかる」


 こげ茶の天パを弄りつつ見上げる布明はそうつぶやいた。


「確かに、この島で、あそこに泊まれるような人間で、あそこまではしゃげる子なんてそうそういないわ」

「~♪」


 栞や刹那としても同様だろう。


 さすがに地上百五十メートルとか、そういう高さにいる人間の姿を正確に判断するのはこの中だと栞くらいだが、そうでなかったとしても、椿が何となくいるんだろうな。というのは分かる。


「まあ、僕らも行ってみようか。しかしあの様子だと、時雨さんは来てないな。なにしてんだろ」


 ギャグ補正フル解放中の三人組の相手をしてます(地獄)。


 で、栞たちも最上階にやってきた。


「むふふ~!うへへ~!」


 栞たちの姿を確認した椿が興奮している。


 そのまま栞に抱き着いた。

 むぎゅううう!と力いっぱいであり、全力。

 それに対して栞は慣れた手つきで撫でている。


「むっふっふ~!」

「とりあえず出入口ではしゃいでいてもアレだし、中に入ろうか」

「そうだね」


 興奮して抱き着いたまま離れない椿と栞を中に運び込んで、とりあえず近くのソファまで移動する。


「ふう……で、どうするの?」

「こういう時の鎮め方は知らないわ。時間以外に薬がないのよ。発作だから」

「……どういう脳の構造をしているんだろうね」


 それはわからん。


「まあ、とりあえず、保護者が帰ってくるまで待ちますか」

「そうするしかないわね」

「~♪」


 秀星たちが帰ってきたからと言って発作が治るわけではない。


 ただ、そもそも栞たちが進めたい話があって、それのためには秀星たちが必要だ。


 結局待機である。

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