第千二百七十八話
「おおっ!このホテルは凄いですね!」
とても綺麗で煌びやかなホテルに到着する秀星たち。
幽月との『確認』はいろいろ終わったようで、ホテルに直行したというわけだ。
ちなみに、幽月からもらった何の役にも立たないししおどしに関しては、椿がむーむー言いながら使い道を考えている様子で、まだ手に持っている状態だ。
そのため、絵面がめちゃくちゃシュールになっている。
「とりあえずこのホテルの一番いい部屋を用意した。そこを使うといい」
「いいのか?」
「魔法次官の小僧もそうだが、君も、優遇するだけの価値はある」
アトムを坊ちゃん呼ばわりとは。
「むふふ~~っ!わっほおおおいっ!」
椿ちゃんはホテルの中に突撃!
「……はぁ。入るか」
「そうだね」
秀星と風香も中に入る。
椿はフロントで受付のお姉さんと話していた。
「椿ちゃんね。連絡は聞いてるわ。この鍵を使ってね」
鍵を受け取っている。
事務的なモノではなく柔らかい表情で対応されている椿だが、椿を相手に業務がどうのこうのということほど無駄なものはない。
「はい!ありがとうございます!」
元気な様子の椿。
声は大きいのでフロントでは迷惑かもしれないが、謎仕様によって、実はそこまで声が響いていない。
外で思いっきり『遠くにいる誰かに呼びかける』ときにはしっかり大きな声になるのだが、まあ、その程度のことはよくあることだ。
「……あと、それ、何?」
「これですか?幽月から貰ったんですよ!」
何の役にも立たないししおどしを見せる椿。
……言葉が詰まる受付のお姉さんだが、まあ正直、『フロントに来たお客さんがししおどしを持っているときの正しい対応って何ですか?』とか、ベテランでも無理だ。
「……うーん。まあ、あの人って結構トチ狂った事しますからねぇ」
受付のお姉さんに散々な言われようの幽月である。
「まあとにかく、これがあれば最上階の部屋を使えるんですね!」
「はい」
「なら、行ってきまーす!」
ピューーーーっ!とししおどしを持って走っていく椿。
廊下を走ってはいけません!
「……椿は椿か」
「あと、幽月さん酷評されてたけど、それはいいの?」
「いつものことだ」
「……」
なんだろう。統治者というか、上位者というか、なんか威厳もクソもないことが多々あるのだが、これは何かの呪いだろうか。
……呪いだろうな。
受付から鍵を受け取って最上階に行く秀星たちは、どうしようもないモヤモヤを抱えながらも、とりあえずそれらの呪いの犯人を椿や高志たちであるということにして、エレベーターで上に向かった。




