第千二百七十六話
「むっ!幽月さんですううう~~~っ!」
学校の外にあるフードコートで話していた秀星、風香、幽月の三人だが、椿がやってきて三人を発見。
幽月の存在を確認すると、目を輝かせて突撃。
そのまま椅子に座る幽月に抱き着いた。
幽月は特に抵抗はせず、椿の頭を撫でたりして対応している。
……外見的には秀星たちとそう変わらない年齢のように見える。ただ、これは時雨もそうなのだが、外見年齢からは測り切れない余裕みたいなものが滲み出ているのは一体何なのだろうか。
「こうして触れ合うと、尚更……よくわからないな」
「それには同意しておくか」
「そうだね」
椿のことを理解しようとするのは相当難しい。
何も考えず、ただ眺めたり接したりするのが椿とのかかわり方であり、そこに理屈とか理解とか、そういう解析めいたことをやろうとしてもすべて無駄である。
あまり現代の理屈が通用しないのが椿だ。『よくわからない』という言葉自体、かなり漠然としているが、言い換えればそれが一番適している。
「うへへ~♪」
抱き着いている椿はうれしそうである。
頭を撫でられたりもしているが、それも気持ちいいのだろう。
「……なんか慣れてないか?」
「そうするタイミングが多いというだけのことだ」
どういう人生だそれは。
「ところで、時雨たちは?一緒に行動していたはずだが」
「む?……むー。置いてきました!」
「時雨を撒いてきたのか……すごい勘と身体能力だな」
なんだか言葉がため息交じりになる幽月。
とんでもなくエロい体をしていて、しかも普段着がドレスという、なんだかよくわからない時雨は相当なものだろう。この島のナンバーツーだし。
そんな時雨ですら『扱いきれない』というのは、幽月視点ではかなり新鮮のようだ。
「……どうなってるんだろうな。この家族は……まあいい。とにかく、今は決戦について話を進めておこうか」




