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第千二百七十五話

「私が呼ぶ前に君たちの方が来るとは……誰かを呼ぶのはよくあることだが、思ったよりそちらはひじょうしきだな」

「本当に全くの偶然だからなぁ……資料には多忙な人間だって書いてたから、こんなところにいるとは思わなかったし」

「多忙ではあるが、時間が作れないわけではないからな」


 伏原幽月。


 この坂神島のトップの男であり、寝ているときは分からなかったが、腐ったような目が特徴的だ。


 あまり生気を感じられない表情をしているが、具合が悪いというよりはそれがデフォなのだろう。


「……しかし、朝森椿か……私も少し確認したが、とんでもない少女だな」

「まあ、その『とんでもない』をどういう意味で使ってるのかが非常に気になるけど、まあそうだな」

「一番大きい部分は、未来からやってきても全知神レルクスからのお咎めがほぼないというところだ。なんせ『未来』だからな。何かしらの制約を課されたうえで来るのが普通だろうが、感じられない」

「勘が鋭い子だから、多分全知神レルクスの地雷を踏まないだけだと思う」

「羨ましいことだ」


 ため息をつく幽月。


「で、この坂神島が決戦の地になる。とのことだが」

「ああ。まあ、いろいろ計算したらこの場所になったんだよ」

「ふむ……計算ね……まあ、私もそうなったからとやかく言うつもりはないが」


 寛容である。


「まあ、私も準備することはいろいろあるから好き勝手にしていいとは言えないが、君も考えることは多いだろう。良いホテルを用意するから。ゆっくりするといい」

「いいのか?なんか至れり尽くせりなんだけど」

「そうしないとあとで面倒になると思えば、初期投資は大きくする。それだけだ」


 まあ言い換えれば……秀星も幽月も、めんどくさがりやであることに変わりはない。ということである。

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