第千二百七十四話
「ねえ、秀星君」
「どした?」
「なんか騒がしい感じがしない?」
「……実はする」
坂神島を歩く秀星と風香。
秀星としては、なんだか遠くの方で父と娘が好き勝手やっているような気がして、『なんかうちの家族がすみません』と言いたくなるような感じになっているが、それは今更。
もちろん、二人からは好き勝手している四人の姿は見えていないわけだが、それでも、何となく『騒がしい感じ』がしてくるのだ。
いや、『感じ』をもうちょっと具体的に言い換えると『胸騒ぎ』ともいうが、いずれにせよマイナス的な感情であることに変わりはない。
「ま、仕方がないか。時雨さんには頑張ってもらおう」
「捌ききれるかな」
「いや、捌く必要はないだろ、むしろ暴走しておいて、『閑話休題』って軌道修正する方がヤケクソにできる」
「高度なコミュニケーション能力が求められるね……」
それくらいじゃないと椿たちとはやっていけません。
「……ん?」
歩き回っていた秀星と風香だが、ある場所に到着する。
「ここって……学校だよね」
「坂神島にもあるんだな……そりゃそうか」
かなり敷地の広い学校があった。
正面から門を見てみると、『坂神島第七高等学校』という表札が張られている。
「思ったより学校も多いのかもな」
「パンフレット全く見ずにフラフラしてたから全然気が付かなかったね」
さすがに権限のレベルが高くても学校に無断では入れないので、あたりをぐるっと一周する二人。
……まあ、十分、不審者っぽいムーブではある。が、誰かが気にしている様子はない。
学校はそこそこ多いだろうが、かなり近代の技術が結集している外見をしている。
気になるのも無理はないからだ。ずっと居座っていたら職質されるけど。
「……あ、あの草原で誰かが寝てる」
「あ。本当だ」
ちょっと高い場所に行ってから見てみると、敷地内がよく見える。
そこから見える草原に、一人の少年が寝ころんでいた。
黒髪の天然パーマで、首からはドクロのネックレスを吊るしている。
「……」
何か、『妙』なものを感じた秀星。
その時、スマホから着信音が鳴った。
「……椿か。はい、もしもし」
『むふふっ!時雨さんと遊ぶのは楽しいです!』
「……そうか。それは何より……で、一つ聞きたいんだが、いいか?」
『む?なんですか?』
「黒髪天パで、ドクロのネックレスをつけてるやつ。知ってるか?」
『にゅ~~……む?……むおおおっ!』
知っているようだ。
『幽月さんですね!この島の統治者です!何処にいるんですか!?』
「……」
体の内側から疲れがあふれてきた秀星であった。




