第千二百七十二話
「おおおっ!おじいちゃんですううう~~~っ!」
祖父に会った。というだけでここまで喜べる高校一年生がいるだろうか。
「おっ、椿か。そういや先に来てたからな」
「後ろに連れてる美女は誰だ?」
「うー!」
三人も椿を発見して楽しそうな様子だ。
……周囲にいる島の住民はヒヤヒヤしているが。
そりゃまぁ、この四人が揃ったらどうなるのかなんて誰にもわからないからな。
しかも、こう見えて加減はしっかりしているし、勘も鋭いから、被害者側がヤケクソになればなんとかなってしまうという地獄のようなことになっているのだが……椿がいる時点で今更である。
「あ、紹介しますね!こちらは周防時雨さんと言って、この島のナンバーツーなんですよ!」
「ナンバーツー!?」
「そりゃすげえビッグな感じだなぁ」
「うー!」
驚いている三人だが、萎縮度がゼロであるということも事実のようだ。
まあ、この三人にとってはどうでもいいことだ。
バールで空間をぶち割ってトンネルを作るような奴らなので、理屈の通った強さが怖くないのだ。なんてこった。
「うー!」
沙耶がジャンプして時雨の胸に顔を埋めるようにして突撃!
時雨はそのまま慣れた手つきで沙耶を抱えた。
「うー!うー!」
「あらあら、どうしちゃったのかしら」
「多分何も考えてないと思うぞ」
「だな。オレもそう思う」
「ですね。沙耶ちゃんは人を胸じゃなくて臭いで判断しますから」
……。
「どういうことかしら?」
「来夏さんが汗臭いままで抱き着いたりするので、視覚と触覚よりも嗅覚を不快とするかどうかの判断に使っているということです」
「あれ、気にしてたの?」
「そりゃ気にするだろ……」
まあ、汗というのは人間にとって個人個人で差が出る分泌物なので、それをフル解放しながら抱き着くとなればマーキングには十分だが、過剰になるとただ臭いだけである。
「まあいいや!」
「うううううううっ!」
何かが納得いかない沙耶。
「沙耶ちゃん。大丈夫ですよ!慣れれば癖になります!」
椿はもともと風香に抱き着きまくってるが、当然、風香だって汗をかきまくってることはあるわけだ。秀星の隣で戦うためにいろいろ特訓しているからね。
で、椿は汗だくになった風香でも平気である。
嗅覚がちょっと異常なのだ。
結論。椿の言い分は聞くだけ無駄。
「なんでですかああ~~~っ!」
話がややこしくなるから地の文に突っ込むんじゃない。
「椿は誰と話してるんだ?」
「全知神レルクスの関係者ですよ!」
そんな返答初めて聞いたわ。
「……理解できないわ。なんかこう。いろいろと」
でしょうね。
で……ボケ四人に対してツッコミ一人だから、頑張ってくれ。




