第千二百七十一話
「おじいちゃんが来ていますね!」
「……」
フードコートで海鮮丼をモリモリ食べている(まだ食ってんのかコイツ)椿だったが、何かの信号でも受信したのか、満面の笑みを浮かべて宣言した。
一応、時雨は高志たちが来ているということは伝えられている。
そのため、『どうしてわかるん?』となるのだ。
こればかりは、『椿だから』としか言えない。
「むー。でも、どこにいるんですかね~」
海鮮丼を食べ終わって、紙パックをゴミ箱に突っ込むと、きょろきょろと見渡す椿。
さすがにそれで見つかるほど坂神島は狭くない。
「……む!あっちにいる気がします!」
「……」
椿が指差した先。
結論を言えば、その先にはあの三人がいる。
ただ、これは勘と呼べるのだろうか。もっと大きな超能力のようなレベルである。
「どうしてそう思うのかしら?」
「むー……あのあたりではしゃいでいるような感じがするんですよ!目を凝らしてよーく見てください!」
言っていることはよくわからないが、時雨はとりあえず見ることにした。
……すると、なんと表現すればいいのか、漫画でなんかはしゃいでいるやつの傍に出てくる草冠を変形させたような奴がピコピコ出てきているのが見えた。
「……ナニコレ」
知らん。
というか、椿あたりが起こす現象について、理屈の通った説明を求められても無理だ。
常識と社会的通念と論理的整合性はこの際放置して、感覚だけでそういうものだと思ってほしい。
……それができれば苦労はないが。
「おじいちゃんが待ってるですううう~~~っ!」
というわけで、全速力で走り出す椿ちゃん。
腹いっぱい食べた後なのに、よくそこまで走れるものである。




