第千二百六十八話
坂神島はセキュリティがえぐいので、定期便を使わずに来る場合はマジで泳ぐしかない。
だが、圧倒的な身体能力を持つと推測されるマクロードとユイカミが筋肉痛に悩まされていることを考えると、相当な距離があり、普通に考えて泳いでくるようなものではないのだ。
「よっしゃー!大海原を泳ぎ切ったぞ!」
「あー疲れた!だけど運動量すげえな!大満足!」
「うーっ!」
だから泳いでくるようなものではないって言ってんだろうが。
なお、元気な赤ん坊(っぽい奴)がいるので察していただけると思うが、高志、来夏、沙耶の三人である。
高志と来夏は海水から体を持ちあげてコンクリの床に立ち上がり、沙耶は潜水艦からコンクリの床にジャンプ。
「さてと、これからどうするかな」
「あー。職質させてもらっていい?」
頭痛が痛くなって胃潰瘍に穴が開いたような表情をした警備員が三人がいるところに歩いてきた。
「ん?どうした?」
「いや、明らかに正常じゃないところから入ってきたからね。続きは署で聞くから……」
「あ。俺、こういうの貰ってるぞ」
高志はバッキバキの特攻服の内側から防水ラミネートされた一枚の紙を取り出して見せる。
一番上には、『坂神島特殊侵入、および特殊滞在許可書』と記載されている。
許可されているのは『朝森高志』『諸星来夏』『諸星沙耶』の三名と記載されており、三人の顔写真付きである。
「……」
定期便に乗り遅れた。という話は、坂神島では珍しくない。
秀星ですらその存在を認識できないほどの島であり、侵入できる便はかなり限られているし、その情報の秘匿性も高い。
秘匿性確保のために船への案内も詳しくは行われておらず、乗り遅れるものはいるのだ。
だが、乗り遅れたからと言って泳いでくるというのはどういうことなのだろう。
というか、約一名、なんか潜水艦に乗っていなかったか?
あと、『特殊侵入』はギリギリ理解できるのだが、『特殊滞在』ってなんだ?『特例』じゃないのか?『特殊』って何をどう比べて特殊なんだ?
「まあそういうわけだから、で、潜水艦ってどこに泊めておけばいいんだ?特に場所がないんならバールで異空間に入れとくけど」
「?」
言っている事が理解できない警備員さん。
とか何とか言っている間に、沙耶が背負っていた鞄を降ろすと、潜水艦の先端をその中に差し込む。
そのまま、グググググググバキバキバキバキバキバキッ!と潜水艦を鞄に入れていく。
「え、ええ!?」
これにはびっくり!
で、潜水艦は全てが鞄の中に入った。
「あ、それ、格納できたのか」
格納と言うより強引に押し込んだように見えるが。ついでに言うと鞄の体積が絶対に足りない。
「なら問題ねえな。ここは魚が美味いらしいし、海鮮丼食いに行こうぜ!」
「うーっ!」
来夏が宣言すると、沙耶は激しく同意。
「だな!確かにそこが楽しみなんだよ。行くぜ!」
高志も追随。
というわけで、三人はそのまま坂神島の中にズンズンと侵入していった。
「……とりあえず。事務室に行くか」
報告書、頑張って。
この作品はやっぱりこうでなくっちゃ!ああああ楽しいっ!




