第千二百六十六話
「なーんか。おバカなことになってる気がするんだけど、気のせいかな」
栞、刹那、布明の三人は坂神島を散策中である。
そんな中、布明が何となく呟いた。
「椿がいるんだから、馬鹿なことになってないはずないわ」
「~♪」
ただ、布明のつぶやきに関しては、栞がほぼ一刀両断する形で終わった。
正直、布明としても予想出来ていたことだろう。
「まあ。いいか……ただ……」
布明は栞を見る。
「……何かしら?」
「いや、すごく視線を集めてるけど、気にしないの凄いねって思っただけ」
「……」
言われた栞としても、『なんだそんな話か』といったところらしい。
ただ、栞の美貌とスタイルは尋常ではないレベルなのは確かであり、さらに、気品や風格が備わっていて近づきがたい印象がある。
布明は『そういう人』に対しても慣れがあるのか普通に接しているが、坂神島の面々も、チラチラと視線は向けてくるが、近寄ってくることはない。
「……まあでもあれだね。どこか子供を見るような雰囲気だけど」
「……」
布明の子の言い分には明確に難色を示す栞。
美貌とスタイルと実力という点において、今の日本でも、栞は六位に入れるだろう。
秀星やアトム、高志や来夏、そして神祖の神器を持つ風香には及ばないが、それでも、その才能は圧倒的だ。
だが、その『上位』の連中の実力が分かるゆえに、『努力せずともできる天才』ではあるが、成長力がほぼない栞はコンプレックスがすさまじいのだ。
そんな栞と、彼女とよく似た属性を持ちながらも、近づきがたい印象が全くない時雨は、坂神島の面々にとって、とても『比べやすい』のである。
ドレス姿で建物の上を飛び回ってパルクールだとか、派手なことをたびたびやらかすのが時雨であり、そのやんちゃっぷりは坂神島の多くが知るところ。
実年齢として見ても、時雨は高校生でも通じる外見ではあるが、見た目以上に高く、言ってしまえば余裕がある。
「……まあ、環境の差だろうね」
布明は栞を見て、そんな言葉で締めくくりつつ、坂神島の中央を目指す。




