第千二百六十五話
展望台の一階に、面白いおもちゃがあった。
「む?この水晶はなんですか?」
「『魔力測定器』よ。水晶に触れると、その人物の魔力量を調べることができるわ」
「おおお!」
ちなみに、異世界グリモアにも冒険者ギルドなどで置かれている物体である。
「これって魔力量が多いと爆発するんですか?」
「爆薬は入ってないから爆発はしないわよ」
「なるほどです!」
ちょっと話にズレがあるような気がしなくもないが、まあ、確かに、爆薬が入っていないのなら爆発はしないだろう。
まあ、魔力量に耐えきれないから『破裂』するというパターンはあっても、爆発はしないと思う……思うよ。うん。
「時雨さんはどんな感じなんですか?」
「そうねぇ……」
時雨は水晶に触れた。
すると、水晶が小さくチカチカと光る。
「この水晶で測って、あのモニターに出てくるわ」
「ふむふむ」
奥にあるモニターを見る椿。
『ランクS』
「あれってどういう意味ですか?」
「この測定器で測れる最高値よ。最低をF、最高をSとしてるわ。大体はCかDあたりになるわね」
「平均がCかDですね!私もやってみます!」
椿が笑顔で水晶に触れる。
当然、水晶はチカチカ点滅し……。
「そろそろですかね」
椿は水晶から顔を上げてモニターを見る。
『ZZZ……』
「寝ちゃだめですうううっ!起きるですうううっ!」
何で寝るんだ……。
「むうう!測定器が寝るってどういう事なんですか!だらしないのにも限度がありますよ!むふうううっ!」
プンプンと怒っている様子の椿。
「こんな表記になるのは初めてね……」
さすがにこれに前例があったら会ってみたいわ。
「もう一回やってみますね!」
もう一度水晶に触れる椿。
チカチカ点滅し始めた。
椿はもう一度モニターを見る。
『B』
「む、Bみたいですね」
「……あら?」
時雨は椿を見る。
時雨の瞳が一瞬金色に光るが、それを見る限り……。
「おかしいわね。壊れてるのかしら?」
「むー。ただ、ちょっとBの表記が揺れてるような……あ、変わったです!」
表記が変わった。
『A』
「む?上がったです!」
『K』
「あれれのれ?」
『A(笑)』
「むうう……む?馬鹿ってどういうことですかあああっ!むううう!むうううう!」
まさか魔力測定器にBAKA呼ばわりされるとは、さすが椿である。
「……機械が正常に動いてくれないわね。これ、どうするべきなのかしら……」
判断のしようがない。
というか……椿はアホっぽさにおいては常に保たれているが、それ以外の部分は割とどうでもいいという感じなので、判断などできるわけがない。
「もう一回やってみるです!」
……で。
『NANDOYATTEMOONAZISA!(何度やっても同じさ)』
「うるさいですうううっ!」
結論。
椿とおもちゃの関係性は、椿がおもちゃで遊ぶのではなく、おもちゃが椿で遊ぶのである。




