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第千二百六十二話

 椿の特性を簡潔に言うと、まあ『アホ』なわけだが、基礎的なスペックは高く、勘も鋭い。

 気まぐれであり、『好み』というものが若干判別できないときもある。


「時雨さんとはぐれたですううう~~~っ!」


 ……で、時々『むひゃああああ!』と行動するときがあるので、それによってはぐれることもまぁあるのだ。


 布明は『椿が最強すぎるのでは』みたいなことをごちゃごちゃいっていたが、当たらずとも遠からずといったところ。


 ちなみに、こうなった時の椿は、監視カメラにすら映らない場合が多く、『お前どうなってんねん!』となる人も多い。


 まあ要するに……そういうことだ!


「むうう、ここがどこか全然わからないですううう……」


 一応、ライセンスカードに記載されているQRコードを入力すると、簡単に地図を呼び出せるわけなのだが、椿はそういうことを考えずに生きているのでわからない。


 ……ライセンスを受け取る時に一緒にマニュアルを渡されるのだが、読んでないものはわからない。ということで、椿は迷子というわけだ。


「……あれ?」


 何かを発見した椿。


 どうやら水路の一部のような場所であり、そこに、びしょ濡れになった人物がいるのである。


 で、その人物なのだが……。


「……マクラさん。一体何をやっているんですか?」

「……ああ、椿ちゃんか」


 マクロードである。

 完全にびしょ濡れになっているわけだが、それでもマクロードには何回か遭遇しているのでわかる。


「なんでこんなにびしょ濡れになってるんですか?」

「ん?あ、ああ……この島に入ろうと思っていたんだが、思ってたよりもセキュリティがきつくてね。一応入れるルートは見つけたんだが……一言でいうと泳ぐしかなくてね。泳いできたんだよ」


 『不正入島』という言葉が見え隠れするが、まあ間違ってはいないだろう。


 ただ、椿にそれを言って、プラスになるかマイナスになるかわからないのではぐらかしているようなものだ。


 ……若干文脈がおかしくなっているが、ガチの疲労状態だと思われるので大目に見よう。


「それって……日本から泳いできたんですか?」

「その通りだ」

「ふむ……要するに……マクラさんは頭がおかしいということですね!」

「……」


 『コイツにだけは言われたくない』と思ったマクロードだが、さすがにそれを叫ぶことができるほど元気はない。


「……まあ、私はちょっと休憩する場所を探してくるよ」

「一緒に探しましょうか?」

「いや、いい。自分で探すよ」


 そういって、フラフラしながら歩いていく。


(……はぁ、セキュリティが本当にエグい。ギャグに寄せたら何とかなるかなと思って泳いできたが、想像以上に疲れたな……)


 ギャグに寄せたら何とかなる。

 確かにその傾向はあるが、ギャグというのは難しいのだ。


 ……とりあえず、明日は全身筋肉痛が確定しているので、頑張ってくれ。

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