第千二百六十話
栞と刹那はゲートをくぐって、港から市街地エリアに入ろうとした。
のだが、栞はゲートをくぐった瞬間、下に向けて足で強烈な衝撃を発生させる。
ズドンッ!と地面が震え、空気が震えた。
「うわっひゃあ!」
そしてそれに対して、栞と刹那からかなり離れた位置で、少年のような声で叫び声が発生した。
「……なるほど、この頃から変わらないということですか。布明さん?」
「未来の僕も絶好調のようだね。まさか。ミニスカートの中を覗くための監視魔法を粉砕されるとは……」
やれやれ。と犯罪を暴露しているのは、こげ茶色の天然パーマの少年だ。
Tシャツと短パンという身軽そうな格好であり、どこか『マジかよ』といいたそうな雰囲気を醸し出している。
「それで、この島のナンバースリーが何の用かしら?」
「単純に、君たちが気になったから来ただけさ。そのついでに、美少女のスカートの中がのぞけるなら万々歳ってね!うおっ!」
栞が雷槍の魔法を放ち、布明の目に直撃しそうだったので、慌てたように頭を下げて回避!
そのまま後ろの建物まで飛んでいき、コンクリの壁にあたると魔法が砕けて霧散していった。
「あ、あぶねぇ。人間にだけ影響を与える魔法か」
「チッ」
「そんな舌打ちしないの。で……このやり取りを見ていてもニコニコしているだけとは、なかなかの精神構造だね」
「~♪」
下手すれば流血沙汰だが、それを見ても特に表情を変えない刹那。
「しかし……なんていうか。立ち姿が時雨さんに似てる子だねぇ」
栞を観察しつつ、感想を述べる布明。
「……それはどういうことかしら?」
「言葉通りというか……時雨さんを目標にしてるって感じかな。あーでも、栞さんと違って、ロリコンではあるけどどっちもイケる感じじゃなさそうだね」
「……」
時雨はどっちもいける。
だが、栞は椿が大好きではあるが、『そういう関係』を求めているわけではない。
その違いだろうを見ただけで読み取れるというのは一体どういうことなのだろう。普段から人の赤裸々な部分に切り込んでいるということなのだろうか。
「ほう、その表情……なるほどなるほど。ほっほー。なかなか面白い関係みたいだねぇ」
布明の中で何かの理解があったようだ。
栞はなんだかムカついてきたが、どうぶっ潰せばいいかなと思いつつ、坂神島ではコロシアム以外で暴れるのはマズいと思ったのか、止めることにしたようだ。
それは、坂神島でなければ容赦なく制裁を加えているということなのだろう。
どこか、普段よりも沸点が低い印象があるが、栞にとって、坂神島とはどのような場所なのだろうか。




