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第千二百五十八話

「魚介類のエキスが詰まったラーメン。ものすごくおいしいですね!」


 回収効率の高い穀物と、周囲の海域で養殖した魚介類というものが坂神島の食卓の大部分を占める。


 そんな中どんな料理が流行るのかとなれば、庶民レベルではラーメンとかになるのだ。ちなみに、米はあるのだが、小麦の方が大量に作られていて安いのが坂神島である。


「そうね。研究も結構長いから、その分精錬されてるわ」


 時雨も椿の隣でラーメンを食べている。


 ……肩と背中が露出しているうえにエグいスリットが入ったドレスを着用した時雨がこういう所で食べているとなんだか場違い感はあるが、店主はどこ吹く風。

 その視線は元気そうに食べる椿に向いており、時雨はもう見飽きたエロ本のような扱いである。


「フー。フー。んー……むふふ~♪」


 にぱー!と笑顔になる椿。


「……」


 時雨も人生経験は長いだろうが、椿のような人間と出会うのはさすがに初めてのようで、内心がわからない。


「おかわりです!」

「おう」


 店主も追加のラーメンを作っている。


 その間、椿はニコニコしながら店主がラーメンを作っているのを見ていた。


(そんなに面白いかしら……)


 時雨は疑問に思っているようだが、椿の場合、面白いから見ているというより、人が動いているから見ている。みたいな感じだと思われます。多分。確信はないけど。


 というわけで、新しいラーメンが来たので笑顔で食べ始める椿。


「うへへ~♪おいしいです!」


 何を食べてもおいしいという椿だが、まあ……常日頃から、食材に感謝して食べているくらいだ。価値観も異なるだろう。


(……理解するのは無理ね)


 時雨にはまだその部分は見えていないし、なんならもう諦めることにした節がある。


 椿はかわいい。

 それで。いいじゃないか。

 ……きっと大変なことになるけど。


「もっと食べたいです!」

「よし、ジャンジャン作ってやるからいっぱい食べな」


 ラーメンは安い。

 というわけで、椿も遠慮はない。


 ……椿から遠慮がなくなるとどんな酷いことが起こるのかはわからない。ただ、酷いことが起こることは確定である。

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