第千二百五十六話
「椿ちゃん。一つだけ聞いていいかしら」
「なんですか?」
「初対面の巨乳を揉むことに抵抗がないみたいだけど、どういうことなのかしら?」
「……む?」
椿と時雨は坂神島の商店街を歩き回っていた。
基本的に食べ歩きをしているのだが、平日の昼間であり、そこまで混雑していない。
秀星という名の荷物持ちがいないので、基本的に何か食べ物を買って、それを食べて、美味そうにはしゃぐというものになるのだろうか。
泊まる場所すら決めていないし、『買ったものをどこに輸送すんねん』という話になるので、食べ歩きが鉄板である。
食べ歩きの時の椿の胃袋は『無限』なので。多分だけど。
「むうう……」
で、時雨に言われた質問に対して唸る椿。
……別に、椿にとって悩むものではないということなのだろうか。
話す。目線を下げる。巨乳がある。たゆんたゆんである。ひゃっほい!となる。
それだけのことではなかろうか。
……いや、別に、時雨もそれを悪いと思っているわけではなさそうなのだが……。
「胸って揉みたくなりませんか?」
椿以外の人間が言ったら制裁確定である。
「わかるわ」
……。
「ですよね!だから揉むんですよ!むっはー!」
本当に気まぐれですね。
「まあ、とりあえず、なんとなくわかったわ」
椿の精神性は一般人とは大幅に異なるわけだが、時雨もなんとなくわかったようだ。
要するに椿は『元気なアホ』である。
頭が悪いけど何かを考えているのが『馬鹿』であれば、頭は良いけど何も考えていないのが『アホ』である。
……ちなみに、頭が良くてちゃんと考えているのは『凄い人』で、頭が悪くて何も考えていないのは『よくいる奴』である。
そういう分類でいえば、学業面の成績が悪くない椿は『アホ』である。
「それなら……巨乳ばっかりの風俗店があるから、そこにいく?」
「行きます!」
……。
男の脳みそは下半身にある。
椿の脳みそはどこにあるのだろう。




