第千二百五十話
「お魚ばっかりですううう~~~っ。お肉が高いですううう~~~っ」
新鮮な魚をクーラーボックスに入れた椿が唸っている。
「そんなに高かったの?」
「ここではお肉は高級品ですね」
「まあ、水上に浮かぶ鉄の都市って感じだから、そりゃ肉はなぁ……それに、漁業そのものだってめちゃくちゃ盛んだ。穀物は島の中央の地下にできそうなのがあったけど、肉は無理か」
「ただ、魚はすっごく安いですね」
「だろうな。多分、この島におけるもっとも重要な産業だ」
「む?」
感想を述べる秀星だが、椿はなぜ、そこまで主要と言えるのかがわからない。
「あと、発電所とかも多いけど、なんか輸入に頼ってるのかな」
「いや、そんなことはないだろ」
「え?」
「周囲で養殖されてる魚たちだが、あれ、全部モンスターだ」
「ええっ!?全部ですか!?」
「ああ。モンスターって言うのは、体内に魔石を核に据えて体を強化してるけど、この周囲にいるモンスターたちは、魔石をより高い質にする性質を持ってる。多分、遺伝子工学の末に生み出された種だろう。そういったモンスターたちを育てて増やして、漁業という形にすることで、食糧問題とエネルギー問題を解決してるんだ」
「なるほど!」
魔石の質を高めることに特化したモンスターで畜産をする。
魔物という概念は倒して魔石を得るというものが一般的だが、魔物そのものに対する研究が進むと、そういうこともできるようになるというわけだ。
「……ふむ。とりあえず、この島の食糧事情は分かりました。魚料理ばかりなのはちょっとむーって思いますが、とりあえず、奥を目指しましょう!」
肉か魚かと言われたら肉派の椿。
まあ、我慢ができる子なので、それはいいか。
とりあえず主産業を判断したところで、奥に進んでみよう。




